□べくとる
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夢主でません。
名前だけ。


────



「ねぇ」


薬となる薬草を磨り潰しながら、目の前にいる鬼神にふと声をかけた。


「なんですか」


不機嫌そうな返事。
それもいつものことだけど。





「桜ちゃんって、僕のこと嫌いなのかな」



さっきまで考えていたことを口に出す。



桜ちゃんってのは鬼灯の部下で、時々鬼灯に頼まれて此処に訪れる女の子。

とっても良い子。大人しいしそれに清楚な感じで可愛い。

鬼灯や桃太郎君とは話すときは楽しそうなのに、僕と話すときはどうしてかいつも短い返事と苦笑いだけ。


どう見ても、好感をもたれてるとは思えない。




「本人に聞いてみればいいでしょう」


「それが出来ないから聞いてるんだよ」




聞いてもきっと、桜が返すのは曖昧な笑顔と曖昧な否定だけ。


桜ちゃんの上司ならなにか知ってると思ったけど、聞いた僕がバカだった。



「桜は少々男性恐怖症な面があります」

「…………は?」


唐突に鬼灯が口を開いた。


「生前、あの性格ですから、悪い男に唆され騙された挙げ句、男の悪行の濡れ衣をきらされたことがあるみたいです」

「なにそれ…」

「実際にそれが原因で死んだとか…まあ私も人から聞いた話なので本当かどうかは分かりませんが」



…なるほどね。
自分で言うのもアレだけど、僕は確かに遊びたくて女の子にしょっちゅう話しかけてる。



きっと桜ちゃんもそれを知ってる。だったら尚更なのかもしれない。





鬼灯は薬袋を持ってよっこいせ、と爺臭く腰をあげた。






「しかし白澤さん、貴方が桜に近づくのは貴方の勝手ですが…」



「?、なんだよ」



「万が一、桜を悲しませるようなことをしたら、その首、胴から離れると思え」




久しぶりに鬼灯の鬼の顔を見た気がした。





(桜と話したくて、会いたくなった)




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