□笹の葉にのせる
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「桜、もし私と年に一度しか会えなくなったら、寂しいですか?」


唐突な鬼灯様の質問。
質問の意図がつかめず、少し考えていて思い出した。


「そういえば今日は七夕でしたね」


どうりで、笹の葉があちらこちらに飾ってあるわけだ。
きっと年に一度しか会うことができない織姫と彦星のお話から質問を思いついたんだろう。
……鬼灯様がそんなロマンチックなお話を信じているとは信じがたいけれど。



「で、どうなんです?」

「鬼灯様と年に一度だけですか?」

「はい」


鬼灯様はとりあえず返答がきになるようだった。
うーん、と考え込む。



鬼灯様に、年に一度。

いつも気づいたら傍に居る存在が、年に一度しか感じられない。

…………うーん




「多分、静かでしょうね」

「…………それだけですか?」

「お話しする人が減って、ちょっとだけ寂しく感じるかもしれません」

「ちょっとだけですか?」

「ちょっとだけです」

「即答ですか」




嘘です。
ちょっとだけなんかじゃ、足りません。
本当はすごくすごく寂しくて、きっと気がおかしくなるかもしれない。

…そんなこと、絶対に口に出して言えませんけど。



「まぁ、寂しく感じると言うなら良しとしましょう」

「私が寂しく感じると嬉しいのですか?」

「桜が何も感じないよりはマシです」

「はぁ、そうですか」


相変わらずなんてポジティブな人なんだろう。あ、人じゃないか。



「鬼灯様だったら、天の川を泳いででも………」

「泳いででも?」

「…あ、いえ。なんでも」




泳いででも、私に会いに来てくれそうです。
そんな自惚れた言葉が出るなんて。



「まあ私だったら川を泳いででも桜に会いに行きますよ」


「……年に一回しかだめなのに?」


「そんな制限、いくらでも破ってみせます」


「鬼灯様ならやりそうですね」


「桜が私に会えなくて寂しがっているのは
可愛いですが、それよりも笑っている方が可愛いですからね」


「……そ、そうですか」


「そこは私も会いに行きますとか言えないんですか」


「言いません」



あなたがくるのなら、私は寂しくありません






(願わくは)
(あなたが私から離れませんように)



END

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