□窓で隔たれど
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「あ…。」


長い廊下を歩いているとふと横目に入った、ガラス窓越しに見える鬼神の姿。
間違いなく鬼灯。しかも残業中。
相変わらず黙々と仕事をしている様子だった。

手土産に買ったお饅頭の紙袋をぎゅっと握る。


ガラス窓に向ってはーっと息をかける。
鬼灯様がうっすらとしか見えなくなるくらいの大きさまで白くさせて、指で鬼灯様を囲むようにハートを描く。




「ハート型で囲まれた鬼灯様…なんちゃって」


自分で描いておきながら、なんだか笑えてしまう。
ハートの形はだんだんと見えなくなってきている。



そこで気付いた。心臓が引っくり返るかと思えるほど驚いた。
鬼灯様がじいっとこちらを見ていることに。
相変わらず真顔でどこか眠たげな目をした鬼灯様。
その目の下にはうっすらとクマが。




「い、いつから…」


見てたんだろう。
見られていたと思うとじわじわと頬が火照ってきた。
そうだ。お饅頭、持っていこう。
そうすれば何も怪しまれないで済む気がする。


部屋の入り口にまわり、改めてノックをする。
中から聞こえる入室を許可する声。




大丈夫です。
頬が赤いのは寒いからです。


ハートの形を描いたのは
貴方が好きだからです。







(私の愛で包まれてる)
(どうか気づいて)



END
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