「就職先間違えました」

□3,
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名もなき獄卒君が出ます。
モブな感じです。




―――









「お疲れ様ッス 紅葉様!」

「ん。」



獄卒さんに会釈をする。
うん、元気があってよろしい。





各地獄の視察。
今日も今日とて地獄は平和そのもの。

…いや、地獄に平和ってどうなんだろ。




平和とは言ったものの、
相変わらず叫び声なんかは聞こえるわけで。





「あ、紅葉さん。ちょうどいいところに」

「?」


呼ばれたので振り返ると、1人の獄卒さんがいた。
結構、真面目そうな感じの人だな。



「それがですね…」


…なんだろ。
まぁ、ちょっと時間もあるし…。



「言うことを聞かない亡者がいまして…」

「用事を思い出した。帰ろう」

「待ってください」

「やだ」

「まだ要件言ってませんよ」

「どうせ取り押さえて言うこと聞かせてとかそんなんだろ。」

「あたりです」


ほらみろ。
大体どうして女の私に頼むんだ!?


「そういうのは鬼灯様に頼めばいいだろう」

「それが、前に頼んだんですが…鬼灯様は忙しいと仰っていて頼むなら、紅葉さんに、と」

「私が暇そうに見えるのか君は」

「鬼灯様が仰ったので」

「……さいで」


鬼灯様、絶対面倒だから押し付けたに違いない。きっとそうだ。



「しょうがない。…で、その問題の亡者はどこにいるんだ」


「あそこです」




獄卒が指さした方をみる。
見ると確かに、ぐーだらに何もせず過ごしている亡者がいる。




「だらしないな」

「でしょう」

「ちなみにお前はあいつに何かいったのか?」

「はい。きちんと動くようにいったのですが…聞く耳すら持たないので」



説得が聞きませんでした、とその獄卒は肩をおとす。
当たり前だろう。説得で動くんだったら鬼灯様も金棒なんて持たない。


「お前も鬼灯様みたく金棒かなんかで脅せばいいだろう」

「俺金棒もってないんですよ」

「まぁ、獄卒で持っている者もごくわずかだしな」

「そういえば、鬼灯様は金棒を持ってるけど紅葉さんが金棒持ってる所はみたことないです」

「あー…私金棒持たないからな」

「え、じゃああの亡者動かせないじゃないッスか」

「まぁ、まてまて」


ふふん、と鼻をならす。
着物の太もも部分に手をかける。



「金棒は持ってないが、銃ならある」


がちゃ、と構える。


鬼灯様が金棒なら私は銃。



金棒よりずっと軽いし、攻撃しやすい。





亡者に向って何回か打ったら、
大人しく言うことを聞いてくれた。
なんだ、良い人じゃないか。



「さすが紅葉さんですね。鬼灯様に負けず劣らずの冷徹ぶり」

「ぜんぜん嬉しくないぞ。」

「仕事になるとやっぱ違うんスね」

「そりゃまあ、仕事だから」


かっこよく言ってみた。
しかし、鬼灯様が横流しにした仕事を請け負ったんだ。
団子でも奢ってもらおうか。


何度かお辞儀をする獄卒くんをあとに、仕事場に戻った。





(鬼灯様、私に亡者の始末横流ししたでしょう)
(そういえば紅葉に菓子を土産に買って来たんでした)







END

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