蒼の死神
□第十六幕
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サクッと小気味良い音をたてて、キリトの後方から飛んできた漆黒のピックがクラディールの足のすぐ横の地面に突き刺さった。
ザッザッと金属製のブーツの足音がキリトの耳にはいる。
………誰だ?
その時、クラディールの両手剣に書けていた力が消え、その剣はカランと音をたてて地面に落ちた。
クラディールは目を見開いて後ずさりながら、足音のしている方を見る。
その足音が止まったのは、キリトの目の前に漆黒のブーツが止まったときだった。
キリトはその人物を確認する。
後ろ姿だけのため、暗い灰色のローブとフードしか捉えることはできず、その姿を見つめる。
男か女かも分からないな………。
そう思ったことと、クラディールの異様な恐怖の感じように、キリトは少し頭を捻った。
"男か女かも分からない"?
そんな奴をどっかで………
『お前が新入団員か。』
そのフードの中から恐らくはクラディールに向けられて発されたであろう言葉は、ボイスエフェクトをしているのか、機械質だった。
キリトは一つの直感に辿り着く。
まさか―――こいつは―――………
「し、死神様!!」
クラディールが恐怖のためか、声を裏返しながらそう言った。
やっぱり、こいつは死神だ。
レ ッ ド
あのラフコフの、"幻の殺人者"。
『新入団員かと聞いている。まぁ、それを見れば問答は無用か。』
そう言いながら、死神はキリトを一瞥した。
フードの中の顔は、白い狐のお面で隠されていた。
なんだか、見ているだけで不幸になりそうだ。
キリトがそう思って白いお面を見ていると、そのお面の目に、どこか優しいような雰囲気が見えた。
………?
死神といえば、泣く子も黙る、最凶の殺人者じゃないか。
そんな奴が優しい雰囲気を………?
死神は目線をクラディールに戻すと、ローブの中から出てきた手に、ダガーを持っていた。
片手だけではなく、両手に。
一度聞いたことがある。死神は、システム外スキルの二刀流の短剣使いだと。
その両手に持った短剣で、対象になったプレイヤーのHPをきれいさっぱり消し去るのだと。
死神は両手に持ったダガーをポンポンと空中に放りながら、クラディールに近づいた。
「ひ、ヒィっ!!」
先ほどまで人を殺すことに快感を感じていたそいつは、悲鳴を上げながら後ずさる。