蒼の死神
□第十五幕
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「そのエンブレムは………<笑う棺桶(ラフィンコフィン)>の………」
キリトがかすれ声でそう言うと、クラディールは少し笑った。
ラフィンコフィン。
それはかつてSAOに存在した、最悪最凶の殺人ギルドだ。
残酷且つ冷酷な首領に率いられて、次から次へと新手の殺人手段を生み出し、犠牲者は三桁にも上った。
一度は対話による解決法も考えたが、メッセンジャーを買って出た男も、容赦なく殺された。
やがて攻略組から対ボス戦並みの大規模な合同討伐隊が結成され、血みどろの死闘の果てに壊滅したのもそう昔のことではない。
キリトやアスナもその討伐チームに参加していたが、どこからか情報が漏れていて、ラフコフは迎撃体勢をとっていたのだ。
仲間を守るため、錯乱したキリトは二人のオレンジプレイヤーを殺した。
しかし、そのとき殺されたプレイヤー、並びに黒鉄宮の監獄エリアに捕らえられたプレイヤーの中には、ラフコフの幹部プレイヤーは居たものの、残酷なる首領はいなかった。
そして、そのラフコフには、幻の殺人者がいたという。
それは一切喋らないし、そして自分の正体に気付いたものは全てその場で抹殺してしまう。
そのため、幻だ。
男か女かもわからない。姿も分からない。
唯一その人物についてわかるのは、その異業からつけられた、ある通り名だけだ。
だから、その討伐戦で捕らえられたのか、それとも逃げたのかは分からない。
だが、キリトはその死神のようなやつと、一度だけ剣を交えたことがあった。
交えた、というよりも一方的に向けられたようなものであったが。
まぁ、とにかく。ラフィンコフィンはそんな恐怖の対象になるような人物がいた、極悪ギルドだということだ。
「これは…復讐なのか? お前は、ラフコフの生き残りだったのか?」
掠れ声で聞いたキリトに、クラディールは吐き捨てるように言う。
「はっ、違えよ。そんなだっせぇことすっかよ。
俺がラフコフに入れてもらったのはつい最近だぜ?
この麻痺テクもその時に教わったんだ。
っと、やべえやべえ。」
機械じみた動作で立ち上がると、クラディールは両手剣を担いだ。
「そろそろ毒がきれちまう。そろそろ仕上げといくかぁ。
デュエルの日から毎晩夢に見てたぜ………この瞬間をな。」