蒼の死神
□第十幕
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そして、翌日。
メアとキリトは、アスナと待ち合わせをしているエギルの店で、アイテム整理をしていた。
キリトは二刀流の使い手ということが世間に広まったらしく、朝から自分の家にいろんな人が潜り込んできたらしい。
どこから嗅ぎ付けたのだろうか?
そんな疑問は闇に消えていく。
むしろ知らない方がいいのだ。
きっと、世界の裏を知ることになるだろうと予測される。
と、アイテム整理も一段落ついたところで。
「メアちゃん!キリト君!!どうしよう………」
アスナが緊迫した表情で、店に飛び込んできた。
「あ、アスナさん。おはよー。どうしたの?」
それとは逆に、メアはおっとりした声で尋ねる。
アスナの口から漏れ出た言葉は―――
「大変なことになっちゃった………」
第55層。
アスナの所属するギルド、血盟騎士団の本部がある層だ。
どうやらその団長が、キリトと立ち会いをしたいそうで。
メアはキリトに引っ張られながらこの層に来た。
その本部の上部の部屋。
アスナがコンコンとノックをして返事を待たずに入ると、眩しい光がメアの視界を襲った。
目が慣れてくると、U字型のテーブルがあり、それに人が5人ほど座っているのが分かった。
そして、中央の男だけ、血盟騎士団の制服の色を反転させた、赤地に白の刺繍の鎧を纏っていた。
彼が血盟騎士団団長、ヒースクリフだ。
メアと並んでアインクラッド最強とされるプレイヤーだ。
ユニークスキル、十字剣の使い手。
「やあ。君と話をするのは初めてかな?」
ヒースクリフはメアを一瞥することもなく、キリトに向かってそう言った。
「いえ。前に一度、64層のボス攻略会議で話したことがあります。」
キリトの口調も敬語になっている。
ヒースクリフは少し目を閉じ、その時のことを回想するように言った。
「あれは厳しい戦いだった。我がギルドでも13人の犠牲者を出したのだからな。」
金属質な目を細め、キリトに向かう。
「君は、そのギルドの主力を引き抜こうとしているのだよ。それを私は止めようとしているのだ。」
「待ってください、団長!私は抜けるとは言っていません!ただ、少し休ませてほしいと……」
アスナがそう言ったが、ヒースクリフは聞こうとしなかった。