蒼の死神
□第八幕
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「あんたら知り合いだったのかー。」
メアはキリトとクラインにそう言った。
「おうともよっ!俺らはゲームが始まってからの付き合いだ!」
クラインが威勢よく言い張り、その後ろでキリトがまぁな、とこぼす。
「それにしても、珍しいわ。おめぇがパーティー組んでるなんてよ。」
クラインがキリトに物珍しそうな目で言うと、キリトは呆れたような顔を作った。
「そりゃ、俺だって組むことくらいある。」
「いやぁ………
長年の付き合いの俺には、美人の色香に惑ったようにしか思えなくてよォ………」
「ま、惑ってないっ!」
そう叫んだキリトを、メアは茶化す。
「キリト君、かーわいっ♪」
「うるさいっ!」
そう言うと、キリトはそっぽを向いてしまった。
しかし、クライン、アスナ、メアのニタニタ笑いは止まらない。
ヒビキは一人、初対面の人を笑うのもどうかなぁ、と苦笑いでその場をやり過ごす。
ヒビキはそのままいつもの癖で策敵スキルを発動させると、プレイヤーが近づいてきているのに気がついた。
「誰か、来る。」
と、そこへ。
ザッザッという行進の音が聞こえた。
その音に聞き覚えのあるメア、キリト、アスナはその音の方へ顔を向けた。
そこには、12人の隊列がいた。
その隊列の一番前にいる、ゴツい鎧に身を包んだ人物が休め、と言うと、その人以外の11人はへなへなとその場に座り込む。
どうやら初めての最前線でとても疲れているようだ。
一番前にいる男はこちらに歩み寄る。
「私は軍のコーバッツ中佐だ。」
ハッ、中佐ときたか。
メアは内心鼻で笑いながら、軽く名乗ると、なんの用なのか聞いた。
「この先はマッピングしてあるか?」
コーバッツは単刀直入に聞く。それにはキリトが答え、
「ああ。ボス部屋の前まではマッピングしてある。」
とこう言った。
「では、それを渡してもらいたい。」
「てめぇ!マッピングする苦労がわかってんのかっ!?」
コーバッツの言葉にクラインが怒りぎみに言う。
キリトはそれを手で制し、メニューを表示させた。
「どうせ、町に戻ったら公開しようと思っていた情報だ。」
「おい、そいつは人がよすぎるぜキリトぉ!」
クラインがまだ何かしようとするのを、ヒビキとメアは止める。
その間にキリトはコーバッツにマップを渡した。
「一応言っておくが。ボスに挑もうと思っているのなら、やめておいた方がいい。」
キリトがあくまでも忠告程度にそう言う。
「それは私が決めることだ。」
「どうでしょうか?貴方の仲間は大分、憔悴しきっている様ですが」
メアが呆れたように言うと、コーバッツは。
「私の部下は、この程度で音を上げる軟弱ものではないっ!全員たてっ!」
部下と来たか………
メアが呆れ返っていると、コーバッツの号令で後ろに居た人たちがヨロヨロと立ち上がる。
そして、ボス部屋の方へ消えていった。