蒼の死神
□第七幕
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「あー、逃げた逃げた。」
キリトはようやく落ち着いて立ち止まると、アスナに声を掛けた。
「キリト君、早すぎ。」
アスナが疲れたようにその場に尻餅をつく。
それにならってキリトも座る。
「し、仕方ないだろ。怖かったんだから。」
羞恥心か、キリトが顔を赤らめながらそういうと、アスナがため息をつく。
「あの攻略は、しんどそうね。」
「あぁ。そうだな。」
「今までは本人の意思を尊重して、メアにはボス攻略に出てもらってなかったけど。
今回は出てもらわないと不味いかな………って!」
アスナがいきなり立ち上がり、走って来た道を見る。
「お、おい。どうし………って!」
キリトも合点がいったように立ち上がり、呟く。
「メア、いないじゃん。」
アスナとキリトは顔を見合わせる。
「なんでいないんだ?もしかして、俺らのスピードに着いてこれなかったのか!?」
「確かに………。でも、あの初めて見たソードスキルの速さについていけるくらいだから、それはないんじゃない?」
アスナがメアがクラディールを倒したソードスキルを思い出しながら言う。
一瞬、としか形容できない速さのソードスキルで最強ギルドといわれる血盟騎士団の、アスナの護衛、クラディールを倒したメア。HPをギリギリまで削り取った上に、最後の一撃を、当ててしまえばHPバーが吹っ飛び、クラディールがこの世界と現実世界から永久退場する直前で止めてのけたのだ。
そのタイミングを見極める彼女が、二人のスピードに付いていけないなど、あり得ない。そうアスナは考えた。
「だよなぁ………。どこではぐれたんだろ………。あ、アスナ。お前、フレンド登録していないか?」
キリトがアスナに投げ掛ける。
アスナはキリトがメアを気にかけているのが少し面白くなかったが、答える。
「してないわ。しとけば追跡できるんだけど。私より付き合いが長いキリト君は?」
「してない。パーティー組めって言われただけだしな………」
ため息混じりにそう言ってその場にしゃがみこむ。
「ま、そのうち追いかけてくるかもしれないし、ここで待っていようぜ。」
「そうね。そうしましょう。」
アスナもそう言ってしゃがみこむと、メアの帰りを待った。
一方その頃。
「あー、クッソ………。あの二人、どこに消えたんだよ………」
メアはずかずかと迷宮区の中を歩いていた。
策敵可能範囲内には、キリトとアスナらしいプレイヤーの反応はないし、フレンド登録を二人ともとしていないし。
つまりは、合流できる可能性が、スゴく低いのである。
ボスの部屋で、メアはキリトに言われた通り、ヤバそうだったから部屋の外に出たのだが、あの二人はというと、叫び声をあげて部屋から飛び出し、迷宮区のどこかに消えてしまった。
根性なしめ。
ああ、もう嫌になってくる。
あ、私の根性が図太いだけか………。
でも逃げるってどーよ?攻略組としてどーよ?
メアは辟易しながら二人の捜索を続けた。