蒼の死神

□第三幕
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「で?どこで調理するの?」

 エギルの店を出たところで、アスナがメアとキリトに尋ねた。

「メアの家はどうだ?」

 キリトがそういうと、メアはぎこちなく笑った。

「え、えーと。私んちはいい調理器具無いかなぁ。生憎、料理スキルは上げてないもんで。」

「ふぅん。まぁどうせ、キリト君の家にもろくな調理器具無いしね。」

「悪かったな。」

 アスナに言われ、キリトが口を尖らせ気味に不貞腐れる。

「今回は食材に免じて私の家を貸してあげてもいいわ。」

 アスナが二人から顔を背けながら言う。

「うわー。ありがとう、アスナさん。」

「ま、幻のS級食材を料理できるんだったら、それくらいはさせてもらうわ。
 さ、行きましょ。」

 キリトとメアはアスナの背を追った。

 すると。

「アスナ様。勝手な行動をされては困ります。」

 アスナの後ろについていた、護衛でキリトをじっと見ていた方が言う。

「あぁ、二人とも。今日はもう本部に戻っていいわ。ご苦労様。」

 アスナが二人に労いの言葉をかけ、一歩進むと、またもや後ろから声が。

「アスナ様っ!こんなごみ溜めに足を運ぶだけでなく、正体不明のこの奴等を家に招くおつもりですかっ!!」

「この人達……こちらの女の子はよく知らないけど、この人は素性はともかく腕は確かだわ。
 クラディール。貴方よりは多分レベルが10は上よ。」

「そんなことなどっ。」

 クラディールと呼ばれたその護衛は、苛立ちに顔を歪ませる。

「そうか。貴様、ビーターだな。」

 クラディールはキリトに目を向け、そう言った。

 ビーターというのは、ベーターテスターにずるをするチーターを掛け合わせた言葉である。

「ああ。そうだ。」

 なんの躊躇もなく、キリトはそう言った。

「アスナ様。コイツらは自分さえよかったらいい連中ですよ。そんなやつらと絡むなど………」

「いいから貴方は帰りなさい。副団長として命令します。」

 アスナはピシャリとそう言うと、クラディールに背を向け歩き出した。

 メアはキリトとそのアスナの背を追いかける。

 ふと振り向くと、キリトの背中を憎々し気に睨む、クラディールの姿が目に入った。
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