蒼の死神
□第十六幕
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死神は、白狐のお面の赤く縁取られた黒い目の部分でクラディールをよく観察すると、手のダガーを放るのをやめ、手で受け止める。
『失格………』
そう呟くと、クラディールの顔が一層引き吊り、恐怖の顔のまま固まった。
キリトはその失格の言葉に込められた意味を全く理解できないため、口を開けて見守る。
すると死神はいきなりダガーをクラディールの腹部に突き刺した。
クラディールのHPバーがいきなり3分の1程減少する。
クラディールはパクパクと口を動かしながら逃げようとするが、死神の恐るべきスピードから逃れられない。
キリトは目を見張る。
元KoBのメンバーの体力を、一撃であれだけ削るだと………!!
そんな恐ろしい筋力パラメーターを持っている奴は、一人も見たことがない。
「死神様っ!! 何故………」
クラディールが必死に叫ぶ。
『済まないな。兄貴に頼まれているもんでな。』
死神が答えてそう言うと、クラディールの喉元に左手の短剣を突き立てる。
そしてもう一方の短剣を首を吹き飛ばす要領で振るうと、呆気なくクラディールの首が吹き飛び、HPがゼロになった。
クラディールの体が青い光を帯びて、バラバラに砕け散る。
「っ!!!」
その光景に残虐さを見いだしたキリトは、麻痺毒の切れて動かせるようになった手を口許に当てる。
ありえない………
例え仲間だろうと、殺すのか?
なんだか分からないが、失格だという理由で。
この死神は………!!
言い様のない憤怒を感じながらも、キリトの体は動かない。
きっと、これもまた言い様のない恐怖心に駆られているのだ。
憤怒よりも恐怖が先にキリトの体を支配する。
逃げようにも逃げられない。
この実物化した恐怖に抗える者など、この世界には一人もいないだろう。