蒼の死神

□第十三幕
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 転移門前でキリトが待っていると来た人物は―――

「っ!!」

 クラディールであった。

 俯いて、更に前髪が長いために表情はよくわからない。

 キリトが後ずさると、ゴドフリーが言う。

「君たちの間柄はよく理解している。が、しかし、ギルドにその雰囲気を持ち込むのは非常によろしくないのでな。
 これを機に仲直りすればどうだろうか。
 これから何回も顔を会わせる機会があるだろうしな。」

 クラディールが頭を下げたまま、キリトの方へ一歩出る。

 反射的にキリトが後ろへ下がると、もごもごと何かを言い出した。

「この間はご迷惑をお掛けしまして………」

 キリトが驚いたような顔を作る。

 そりゃそうだろう。

 ついこの間、自分に殺意をあらかさまに向けてきたこの男が、頭を下げて、自分に謝罪しているのだから。

「今後、こういうことは無いようにしていくので、許していただきたい。」

「あ、ああ。」

 性格改造手術でもしたんじゃないか、というほどの変わりっぷりだ。SAOでそんな手術が出来るのかは知らないが。

 でもこの男、何か引っ掛かる。

 キリトは疑心が心の全土を満たしていくのを感じ、警戒は解かないようにしよう、と心に決めた。

「じゃぁ、出発!」

 ゴドフリーの声に引かれ、キリトはその場から迷宮区向けて出発する。

 背後に気を使っていなかったため、その時転移門から出てきた人影に気づくことはなかった。











 メアの反応があった低層フロアに来ていたアスナは、その久しぶりに見る景色を眺めながら、考えていた。

 なぜ私はメアを探しに来たのだろうか。

 その一心で頭のなかはいっぱいだった。

 アスナにとってのメアは、所謂恋敵のようなものだ。

 アスナはキリトのことが好きだ。

 それは認めよう。

 だけど、時折キリトが見せる、メアのことを考えているような表情は認められない。

 でも、実際のところはどう思っているのかわからない。

 それはアスナにしても同じだった。

 確かに恋敵のような立ち位置にメアはいるが、アスナは自分はメアを心の底では敵対していないのではないか。

 そんな風に考える。

 その場で一心に考えていたため、そのフロアからメアが消えていることに、アスナは気づかなかった。
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