蒼の死神
□第二十四幕
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第二層、フィールド《夕暮れの丘》にて。
メアは死神の時の格好で、鮮やかな夕日を眺めながら、初めてこの世界に来た日の事を思い返していた。
絶対、いつも通りの当たり障りない一日になるはずだった。
前日に兄貴がこのゲームを買ってくれて。
それにログインしてみただけ。
だが、それまでの当たり障りない日々は、あのこの世界の創造者によって消されてしまった。
その怨みを晴らすように、人々を殺す。
初めはそんな目的でやっていたことなのに、いつの間にかギルドなんて物が出来て、そして、《最凶殺人ギルド》なんて呼ばれていた。
《殺人》なんていう、ゲームクリアの妨害にしかならないものに、ギルドなんかができる。
凄くアホらしい。
サクッとクリアするために蓄えた攻略組の労力も、そう昔ではないあの日に、《ラフィンコフィン討伐》みたいなもののために裂かれ。
こんな考えをしていると、自分は今の生活が嫌いなのか? と思ったりするけれど、断じてそうではない。
ギルドに加入した奴等も、悪人だらけだったけど、すごく居心地が良かった。
ホントに殺人ギルドかっていう程、遊んだり、バカしたり。
でも分かってる。
きっと皆無理してるんだ。
殺人者の奴等だって、攻略組の奴等だって、中層プレイヤー達だって。
本当は皆、向こうに帰りたいって心のどこかじゃ思ってる。
心の全てでこの世界に居たいって思ってる人なんて、そうは居ないだろう。
そう考えると、ギルドの幹部であった《ジョニー・ブラック》と《赤目のザザ》はメアとは逆の人種だった。
彼らは本当にこの世界を楽しんでいた。
でも、メアはそんな二人が嫌いじゃなかった。
むしろ好きであった。
その二人は今や監獄エリアで監禁されている。
じゃあ、今私がすべきことは何か。
それは――――――
その時、後ろから足音が聞こえ、メアは背中の鎌を抜き、軽く振り回す。
「………メア。」
凛とした声が響く。
振り向かずとも分かった。アスナだ。
ここに来た理由なんて、先程兄貴に頼まれて情報屋にアスナに流させた、自分とのデュエルの為だろう。
『奇遇だね、アスナさん。
本当に来てくれるとは思ってなかったよ。』
そう振り向かずに言うとメアは鎌を肩に担いだ。
アスナの身構える音が聞こえる。
メアは後ろを向くと、アスナに鎌を向けた。
「どっからでも、かかって来て?」
メアは、フード奥の狐のお面を外してそう言った。
アスナの顔が緊張感のあるものへと変わる。
メアは少し笑った。
(さぁて。どう来るかな?)