復活

□拍手文。愛故に
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「…ここが、すべての始まりだっけ…」

黒の正装に身を包み、その漆黒はふわふわとする蜂蜜色の髪の毛とは不釣り合いな色で、しかし彼の漂わせる雰囲気からは寂しげな空気が。

カツカツとこれもまた黒の靴で綺麗に艶があることから相当高い靴だと見てわかる。
そんな品のいい靴でゆっくりと、一歩、また一歩と歩んで行く。
門を潜り、靴箱を抜け、階段を一階、二階と上がっていく。

カツ…、と、ある階で止まる。
そして、静寂になった廊下には、彼の吐く吐息だけで、他は世界が止まったように静かで。
それを彼はまた、ゆっくりと深呼吸をして上の標識を見上げる。

2ーA

じわりと手には軽く汗が滲む。
それに気づいて掌を開けたり閉じたりして、そりて開けるかどうか迷って迷った挙げ句、扉に手をかける。

そっと扉を開け、ふわりと風が蜂蜜色を掻き分ける。
もう夜に近い夕方で、外からはもう夕日が今日の役目を終えようとしているところだった。

昔よりも小さく懐かしく感じる机を愛しく撫でる。
木の感触と、忘れていった教科書、相合い傘の落書きをしている机、それぞれの机に少しだけ羨ましさを感じて苦笑に似た微笑をする。

1つ1つの机を触り、撫で乍昔に自分が使っていたであろう場所でその細くて頼りないけど優しい指を止める。

その机には知らない人の名前だとか、絵だとか。
ああ、もう10年も立ったんだなと思う。
自分がここを去ってから色んな人の温もりに触れた机を優しく撫でて、その席に座る。

「…そうか、10年か…、10年、も、ここは変わらないんだな…」

10年がたったと言うのに変わらない校舎に自然と微笑む。
健在で何より、と。

「…皆とも、ここが始まり。いや、アイツがきっかけをくれたんだけど。うん、やっぱり並盛と言えばここだな…」

じっと黒板を見詰めて思い返す。
不良っぽいけどいつだって自分に着いてきてくれる頼れる右腕。
野球が好きでどんな時も笑顔で笑顔にしてくれる親友。
明るくてボクシングが好きで熱血だけど妹想いの先輩。
泣き虫で人一番臆病だけどもやるときはやる年下の男の子。
独りが好きで群れが嫌いだけどもいざとなったら助けてくれる風紀委員長。
マフィア嫌いで不思議な六道輪廻を使い神出鬼没だけどピンチには助けてくれる黒曜生。

「皆、本当に出会えてよかった…。有り難う、俺の家庭教師。皆と会わせてくれた人」
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