呪術

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座学を受けては現場に赴き、帰ってきては体術の授業で投げ飛ばされ、何もない時間には同期や一つ上の先輩達とただ普通に過ごすという色濃い時間を過ごして、季節はまた初夏を迎えた。

初夏、それまでの人々の陰鬱としたものが発散されそれが呪いを生み呪霊の発生がアホみたいに増えるのだ。


「今年も始まったなぁ…」


学年が上がり階級も上がった私は今年の繁忙期は簡単な任務なら単独で行くことも増えて結果として忙しい毎日を送っている。


「おー、そこの二級」

「出たな、特級」

「暇そうにしてんじゃねぇ。働け」

「残念でしたー!もう働いた後ですぅー!!」


朝から立て続けに5件任務をこなし、その上で一度高専に帰還したがまたすぐに出ないといけないのだ。

そもそもこの人が何でここにいるんだろうか。みんな出払ってるんだからこの人こそ働け。


「全部口から出てんだよ。働けじゃねぇよ、バァーカ!」

「あ、また口から出てた」

「俺ももう出んだよ」

「え、まさか車中一緒?地獄じゃん」

「ふっざけんな。こっちの台詞だっつうの」


なんて会話を重ねていればお迎えに来た補助監督がやはり私と五条さんを呼んだ。

案の定同じ車に乗り込んだ五条さんは嫌味なくらい長い足を組んで窓の外を眺めている。


「ひなちゃんも硝子さんも夏油さんもだけどさー五条さんも大概顔が良いよね」

「は?」

「顔だけなら1番好きかな」


性格はクソだけど!と言えば隣の五条さんは遠慮なしに私の頭を叩いた。そういうところだと思う。

それからも軽口を叩いていれば不意に補助監督の携帯が鳴った。一つ断りを入れてその電話に出た彼の表情は段々と強張っていき雲行きが怪しくなる。

どこかで任務に当たっている誰かに何かあったのだろうか。そして現在私の横であくびをしている特級の派遣を要請しているのかもしれない。

考えていれば通話が終わった補助監督は想像通り五条さんに任務の引き継ぎを要請しており、怖い顔をしたまま私に向き直った。


「谷藤さん」

「はい」

「任務が終わり次第高専へ戻ります」

「…何かあったんですか?」


灰原君が亡くなりました、と告げる補助監督の声が一気に遠くに聞こえた。



嘘だと言って
(今朝、早朝から遠くへ行く灰原と七海を見送ったばかりなのに…)



「灰原も七海も気を付けてね」

「谷藤もこれから1人で任務でしょ!頑張ってね!」

「貴女こそ気を付けてください」

「帰ってきたらみんなでご飯食べよ」


約束ね、って言った私に彼は満面の笑みで返して七海は呆れたようなでも仕方ないなと言わんばかりの顔をしていた。

そうか、もう…灰原はいないのか。

2023*04*20
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