ポケットモンスター

□009
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「ピカチュゥ…」

「どうしたのピカチュウ」


もうすぐ寝ようとしている時、ピカチュウが元気の無い音き声をあげた。


「ピカピカチュゥ」

「嫌な予感がするって?…気のせいよ」

「ピカ…」

「寝よう、おやすみ」

「ピカチュウ」


名無しさんとピカチュウは不安をかき消すように、強く抱きしめ合いながら眠った。


「名無しさん〜!!!」


ユウジが名無しさんを起こしにきた。


「なによ…まだ寝てるのに…」

「大変だ!サトシさんが倒れたって…」

「お父さんがっ!?」

「今オーキド博士から連絡があったんだ、」

「ど…どうしよう…」

「ピカ…」

「落ち着け、」

「…うんごめん。ありがとう」


ピカチュウは心配そうな目で名無しさんを見る。

名無しさんの顔は真っ青だ。


「帰る。」

「え…」

「お父さんが心配だもん。」

「いいのか?」

「もう戻って来れないかもしれないけど…」

「…」

「帰るよ。みんなに相談する」

「わかった。」


朝食を食べたあと、みんなに残ってくれと伝えた名無しさん。

もしかしたらこれが最後の食事になるかもしれない。


「名無しさん、食うか?」


ルフィは名無しさんに肉を差し出した。


「え…」

「なんかわかんねェけど…あげたいんだ」


ルフィは勘がいい。

名無しさんがどこかに行くとわかったかのように…肉を差し出した。


「ルフィ…が珍しいわね」

「そうか?」


朝食を食べ終わり、名無しさんは下を向く。


「名無しさん、話ってなんだ?」

「そうよ、今日も忙しいんだからね」

「あのね…私のお父さんが倒れたの…だから…」

「っ!?まさか…」

「帰ろうと思うの…。私の世界に」


クルー達は驚きすぎて声を出せない。


「でも…扉はいつしまるかわからない…だから…」

「これで最後かもしれないのね」

「ロビン!!」


ロビンが不吉なことを言ったため、ルフィが叫んだ。


「ごめんなさい。でも、ちゃんと理解しておいた方がいいわ」

「そうだけどよ、」

「ルフィ達と冒険がしたい、でも…お父さんはたった一人の家族だから」


名無しさんの母は小さいころに亡くなってしまった。

サトシが男手一つで育てたのだ。


「絶対戻ってくる、だから、」

「わかった、行って来い」

「ルフィ!?いいの!?」

「ナミ、いいんだ」

「名無しさんちゃん、ユウジ、これ」


サンジは『海賊弁当』を2人に渡す。


「ありがとう」

「ありがとな」

「名無しさん、ちゃんと渡したかったけどよ…」

「なに?ルフィ」

「これ」


ルフィは赤、緑、オレンジ、黄色、青、ピンク、紫、水色、黒、金色の玉がついたブレスレットを名無しさんに渡した。


「ナミと相談してよ…おれ達の色が入ってんだ」

「る…ふぃ…ありがとう…」


名無しさんはルフィに抱きついた。


「じゃあ、行くよ」

「みんなありがとう!!」


冷蔵庫の扉を開ける。

ここを潜り抜けると、向こうの世界へと行くことができる。



「名無しさん、愛してるぞ!」

「私も!」


そして名無しさんとユウジは消えて行った。


「名無しさん…」

「名無しさんちゃん〜!」

「ユウジも心配しなさい!」

「してるよ〜…名無しさん〜!ユウジ〜!!」


チョッパーは涙でぐちゃぐちゃだ。


「きっと帰ってくるわよ」

「そうだな」
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