番外編

□酒
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「悠香……もうそれくらいにしておいたほうがよくないか…?」

『だいじょうぶですよぉ…これくらいよゆうです………』

「全然大丈夫じゃねぇだろ…。」


今、俺の目の前には酒と酒に酔ってしまった悠香がいる。
ほんのり赤い頬にとろんとした瞳、回らない口とまできているものだから相当酔っているのが見て取れる。
本人は大丈夫だと言うが俺には全くそうは見えない。下戸なら下戸だと言えばよかったんじゃないかと俺は少し後悔した。

どうしてこんなことになったかというと、俺が酒を飲みたいとこぼしたからだ。
悠香は快諾して一緒に飲んでくれていたのだが、あまり酒には強くないらしくあっという間に出来上がってしまった。


「(こりゃもう寝かせた方がいいか…?)」


これ以上飲めば明日の朝が辛くなるだろう。
それはまずいと思った俺は立ち上がり、そばまで行って悠香を横抱きにした。


『んぇ……なにするんですかぁ…っ』

「お前もう寝とけ。これ以上は明日に響くぜ?」

『やだーっ!はなしてくださいー!!』

「っこら、暴れるな!!」


脚をじたばたさせて悠香は俺の腕から逃れようとしたが、流石に男と女の力の差は埋められずそのまま俺たちは悠香の部屋に辿り着いた。

扉を開けると相変わらず小綺麗な部屋があり、何かが散らかっている様子もなかった。
部屋にある棚に一々「資料」だの「裏紙」だのと書いてあるのは、忘れっぽい悠香が自ら忘れないようにと考えた結果に見える。

部屋に運んでくるまでにすっかりぶすくれてしまった悠香をべっどに寝かせると、悠香は唇をへの字に曲げてそっぽを向いてしまった。


「悠香……。」

『…いいですもんべつに……はらださんのいじわる…。』

「意地悪じゃねぇよ。これ以上はやめとけっていう忠告だ。」

『だからだいじょうぶだっていってるじゃないですか…っ』

「駄目だ。…俺ももう寝るから、今日はここまでな?」

『…………。』


まだ何か不満気に見えるが、どうやらこれで寝てくれそうだ。
縮こまっている悠香に掛け布団を被せたあと何となく俺がべっどの縁に座るとぎしりと音がした。
それにびくりと若干の反応を見せた悠香の藤色の髪を指で梳くと、悠香はそれが心地良いのか眠そうな声をもらした。


『ぅ……もう、おしまいですか…?』

「…おう。酒はまた、いつか飲もうぜ。」

『……はい…。』


くりんとこちらを向いてくれた悠香の額に口付けると、恥ずかしいのか頭まで布団を被ってしまった。
それをやんわりと下ろしながらべっどに入ろうとすると、恥ずかしがりながらも予想に反して悠香は俺を迎えてくれた。


「…いいのか?」

『……きょうだけです…いっしょにねましょ…?』


この状況で上目使いは反則だということを悠香は知らない。
俺はそんな悠香への己の欲望を必死で抑えつつ、悠香の横に寝転び目を閉じた。












(…次はあんまり飲むなよ?)

(んんぅ……)

(……もう寝たのか)



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