06/26の日記

19:31
相沢宏人:飛鳥レポート2
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最近学校を休んでいた穂積飛鳥が、いつも以上の色気を放出させながら学校に来れば、学校中が騒然となった。

ただでさえ夏になった最近、穂積はYシャツのボタンを3つほど開け、隆起している鎖骨から汗を伝わせていた。
体臭に混じる汗の匂いは、同じ性別なはずなのに凄く心地がいい。
運動部の男臭い奴らとは、もはや別次元にいるのかと思うほど。

加えて、暑いからと真っ白なカルピスやら、肌色のヤクルト味のアイスを頬張っていた。
(久々に来た今は食べてないが)
暑いからだろう、紅潮させている顔に、八の字に寄せられる柳眉、鎖骨から覗く汗、溢れる色香、極めつけはアイスを食べる、湿った音。

そんな姿を見れば、穂積を元から狙っていた女男どもは勿論、ノンケなはずの奴らでさえ、頬を紅潮させていた。
中には勃たせてしまったのか、朝からトイレに行くからと、授業を抜け出した奴もいたはず。
しかし、そんなことが起きている中、当人だけは友人に「学校でアイスは変か?」と的外れなことを聞いていた。
…無自覚だから、質が悪い。

そんな夏バージョン(?)の穂積が、久々に登校した時に溢れていたフェロモンはヤバかった。
ダルそうな表情ながらも、情事後特有といった妖艶さを纏わせていて。
極めつけは、いつもよりボタンを閉めているにも関わらず覗けた、首筋に刻まれている赤い所有印。

前々から、彼に恋人がいるだろうと騒動にはなっていたが、それがきっかけで、学校中に知れ渡ったらしい。
噂の速さは光より速いというのが、真実に感じる程、話題は彼のことで持ちきりである。
彼の友人が「オマエ、噂されてんぞー?モテてんな」と茶化しても、「単に物珍しいだけだろ。不良が久々に学校に来たんだしな」と的外れな解答をまたしてもしていた。

そんな中、今日の時間割りを確認すれば、授業でプールがあったことが確認できた。
…ただでさえ、穂積の上半身が見えるからと、着替え中に餌を前にした獣のような目でみる男どもが、所有印だらけの穂積の身体をみたらどうなるだろうか。
…下手したら、恋人が探り当てられ、恋人が血祭りにあげられるかもしれない。
それもまた、一向。
久々に学校を賑わすホットな人物に、口元を吊り上げた。

そして、夏特有の強い日差しが照りつける、正午前。
男子更衣室に穂積が入り、Yシャツを脱いだ途端、辺りが水を打ったかのように静かになった。
―穂積をそういう対象に見ていない俺でさえ、息を呑んでしまって。

日に焼けない白い背中には、いくつもの所有印が刻まれている。
勿論、首筋や鎖骨にも、それはいくつもあって。
チラリと覗いた胸の飾りは、寒くも触れてもいないのに、ツンと尖っている。
邪魔になるからだろう、藍色の髪をピン留めで留めていて。
それにより窺える赤い瞳は、何かを思い出しているのだろう、優しく細められている。

「―ンだよ?…着替えねぇのか?」
動けずにいる俺らに、鶴の一声を浴びせたのは、固まらせた当人だ。
その一声に、固まっていた奴らは慌ただしく着替え始め、口を閉ざしていた奴らは、普通に会話を始める。
…柄にもなく跳ね上がる鼓動を抑えて、俺も着替えを開始した。

―怒涛のプールが終わり、濡れた後の彼の色気にヤられている奴を尻目に、涼しいところへ行こうと足を運べば、何やら情報が耳に飛び込んだ。

1つは、最近の授業や先生への文句。これはどうだっていい。

もう1つは、女子のスカートを捲りたいやら、AVの話。これはこれで奴らの弱味としていいが、結構どうだっていい。

そして、もう1つ。
それは、―穂積をマワすという、計画。
こればかりは、聞き逃せなかった。自分が混ざりたいとかではない、寧ろ、―阻止したい気持ちから。

ネタになるはずだし、穂積を好きなわけではない、そして自分は比較的、苛めたい側である。
…けれど。
―なんだか、面白くない。

穂積にこれをいっても、眉を寄せて否定されるだけだろう。
となれば、言わなければならないのは、恋人の方だ。
あんなに所有印を刻むのだ、少なくとも嫌いではないはず。

そうなれば、極力穂積の傍にいながら、穂積の恋人の情報を掴み、伝えなければならない。

―頼りになるのは、穂積をそのまま大きくしたような、あの人。

そして、―俺にとって××××××人――。

奴らの計画を耳にしながら、携帯をそっと開いて内容を記載し、祈るような思いで、メールを送った。

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