曲パロブック
□VCL.NIC dusk of blue ACT1
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VCL.NIC dusk of blue ACT1
ヴァクレ.エヌアイシー 夕暮れの青
江戸の町。
否、江戸の街だ。
近未来と言う未来像がある。
それは現在。
車や船は空を舞い、国の中央には大きなタワーが立っていた。
はじまりはそんな有り得ないことから始まる。
時は江戸、時代は未来。
【夕暮れ@路地裏にて】
「オイ兄ちゃん。金貸してくんね?」
明らかに不良です。
そう言った右腕に入れ墨を入れた男。
そこに青髪の青年、だろうか、体の細い男が囲まれていた。
黒猫歩く路地裏。
そんな中、烏の鳴き声は途方に暮れたオレンジ色の空へ響いた。
「すみません。そんなお金ないのです」
青年の声は震え、今にも泣きそうな顔をしていた。
「じゃあ金目のモン掻っ攫うまでだぜ」
顔、腹、足、腰、頭。
あちこちと蹴られ、既に力尽きそうな青年は、肩を上下に揺らし、痛みに耐えていた。
財布、刀。腰にさした刀も役立たず、全てを奪われ、相手は帰って行った。
青年は、なんとか動く足で立ち上がり、口から垂れた血を服の裾で拭った。
路地裏からはい出ると目の前にはギラリ、と目を光らす黒猫と目が合った。
そばにあった小さな小石を蹴飛ばせば、警戒態勢に入る黒猫。
淀んだ路地裏から出ればもうすぐ沈む光。
夜になればまた悪夢が始まる。
そう思うと青年は背筋に寒気を感じさせた。
橙の夕暮れ時に、ボロボロになった服。
青年は黙って重い足を動かした。
後ろを振り向くと自分のマフラーの影がヒラヒラと動き、自分は生きているんだと実感した。
と同時に、嫌だとも感じた。
陽が沈む度に長くなる影。
青年は手を陽に向けてギュッ、と握った。
しかし、その手には何も掴めず、何かを掴んだと言うなれば風を掴んだ、だろうか。
電信柱から伸びる電線に一匹の烏。
烏は青年を見下す目で見ていた。
まるで、“空舞う鳥になれない夢見る鳥”を見下すように。
夢を見た。
可愛らしい天使が、「さぁ、おいで」と言いながら手を差し延べてくる夢を。
目を覚ました途端、現実を突き付けられた。
きっとあの天使は悪魔だ。と青年は思った。
今まで生きてきた青年に悲しい現実を見せるために起こした悪魔の仕業。
青年は悔し涙を流しながらまた眠りについた。
「さぁ、おいで」「さぁ、おいで」
ふと目の前に現れた、帰り道に出会った烏と黒猫。
動物は話さないはずなのだが、今の青年にはもう架空でもいいから現実逃避をしたかったのだ。
「真っ黒い者同時、通じあってるのですか?」
しかし、青年が問いただしても烏と黒猫はもうカア、と、ニアゴしか言わなかった。
いや、カァ、とニャアゴかもしれない。
「ッ――――」
また、新しい朝が始まる。と同時に青年の寿命も一つ減った。
まだ、何十年も生きられる彼にとってはそれは地獄でしかなかった。
いつも青年が街を歩くのは夕暮れ時。
それは青年にしかわからない。
夕暮れまで待った青年はまた、路地裏に入っていく。
もう、入ったら戻れない地獄一丁目。
辺りにはほかの子が書いた“BatEnd”と言うラクガキ。
そのラクガキの下には小さなたんぽぽの綿毛があった。
青年はそれを摘み取ってフゥ、と息を吹き掛ける。
風が路地裏まで届いたのかたんぽぽの綿毛はフワリ、と風に乗って飛んで行ってしまった。
不安定なそれはまるで青年を見放すように飛んで行った。
「あのまま、見知らぬ街まで飛んで行くのです」
祈るように青年は願った。
路地裏に黒猫のニアゴ、と言う声が響いた。
上空では烏が飛びながら笑っていた。
カアカア、ニアゴ。
嘲笑うように聴こえる青年はついに狂い、腰にさした、新しい刀で自らの腹に一刺しした。
力が抜け、壁に背を預け、ズルズルと滑り地面に片膝立てて座った。
上から烏が見下して、下からニヤリと笑う黒猫。
その目は最後の言葉をせがむようだった。
「アンタは馬鹿だね」「アンタ、馬鹿だな」
烏と黒猫が同時に言う。
何回も青年は迷い、立ち止まり、生きた証を探した。
それを論するようにニヤニヤと笑われた。
「最後にやり残したことは何だね?」「最後にやり残したことは何だい?」
と問い質すのはカアとニアゴ
青年は言う。
「……………自分を好きになる事……かな」
END
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カイトオンリー!
BatEnd最高。
銀魂のカートニアゴパロ。
カイト、可愛そうです。
なんかカートニアゴパロいいなーってなってノリで書きましたね。
でもカイトって単語、一回も出てないと言う。
短編ですが次あります。