短編
□MOON
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『スクアーロ作戦隊長!!』
アジトへ帰った瞬間、奥からとてとてときょんが駆けて来た。
「その呼び方やめろぉ!!」
『えへへ…スクアーロ?おかえりなさい♪』
「ゔぉお、ただいま…だ。」
「あらっ、きょんこんなとこにいたの?おやつの時間よ♥」
『おやつ…!!』
ぱぁぁあっと明るくなるきょんの顔。
俺がこいつを拾って来てからそろそろ1年くらい。こいつは大分小柄だが推定では17歳前後だ。
舌足らずだった言葉も、大分上手くしゃべれるようになった。
みんな最初は文句を言っていたが、今ではきょんが可愛くて仕方ないらしい。
1年間過ごして、こいつには変わった点があった。
まず、その長い髪の毛が切っても切っても次の日には元に戻っていること。
満月の日は目に包帯を巻きつける。そしてその夜には、部屋にこもって誰にも会ってくれないこと。
満月をやたら気にして、満月が近づくとソワソワして落ち着かない。みんな気になってはいるが、きょんが話したがらないから聞かないのが暗黙のルールになっている。
「きょんっ♪」
くるっと振り返るとベルの人差し指で頬をぷにっと…
「ししっ!引っかかった♪」
『あは…引っかかった♪』
きょんは小さくて白い手で、ベルの人差し指をきゅっと握って、ふにゃっと笑った。
「っ…!!…俺今なら死ねる!!」
「よぉぉし、じゃあ死ねぇ。俺は寝るぞぉ…ぉ…ぐぅ…」
「うわ寝るのはえー、ししっ」
『疲れてる…』
どこから見てもほのぼのした雰囲気。
だがヴァリアーは今、いつ戦いが起こってもおかしくない状況にある。
ボンゴレの戦いが始めた。こっちにその手がまわってくるのも時間の問題だ。
その任務で夜通し走り回り、疲れてんだ…
すると
ジュゥワアアア
ん…?なにやら胸元に熱いものが…
「あっぢぃぃいああっ!?」
『あ…わわ…』
目を開けると思いがけない光景。
ソファで横になる俺の胸元めがけてマグカップからホットココアをどばどばとこぼすきょんがいた。
「ぶっ…!!ちょ…きょんっ?…何でココア…うししししししししっ!」
それを見て笑い転げるベル。
「…突然何がどうしたぁきょん。」
とりあえず茶色く熱くなったシャツを脱いだ。
『ココア…スクアーロに…でも持ってたら思ったより熱くて…』
ごめんなさい…とうなだれるきょん。どうやら俺にココアを入れようとしてくれたらしい。癒される、ってこう言うのを言うんだろうなぁ。
「…ありがとなぁ。火傷してねぇかぁ?」
『うん…』
「しっ…ししししししししっ!」
「笑いすぎだぁ!カスがぁ!三枚におろ…」
ぎゅう…
「すぞぉぉ……?」
俺は剣を抜こうとしたが、きょんが俺の腹に抱きついて来たため遮られた。
シャツを脱いだから上半身は裸だ。そこに小さなきょんの温もり。
『喧嘩はだめ…』
ムラァッ…
不覚にも萌えていると、後ろからもっと小さいのが飛んで来た。
「ちょっ…なにしてるんだい!ロリコン!!きょんから離れなよ!」
マーモンだ。
「ロリコンじゃねぇえ!!」
「ベルならまだしもスクアーロが発情する年齢じゃないだろ!!ほらきょん!それから離れなよ!」
『…すー』
すー?
きょんは寝ていた。