短編


□守りたいもの
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「いやーっ…ごめんごめんっ。救急箱探してたら色々落ちてきちゃって…」





ひょこひょこと埃まみれの10代目がやってくる。





『覗きよっ!犯罪よっ!変態よぉぉぉっ!』






次々と石鹸やら歯ブラシやらが飛んでくる。





ガインッ





俺の頭にドライヤーが激突する。




相当いてぇ…





「10代目〜っ!助けてくださいこれは事故で…っ!」






「えぇっ!?きょんと獄寺くんっ!?なんで喧嘩してんの〜っ!?」











話を聞いたところ、彼女は俺らのひとつ下で、10代目のいとこであるきょんさん。





父親が海外に行ってしまい、いつ帰ってくるか分からないので、





しばらく沢田家で面倒を見る事になったらしい。






『うぇぇんっ…ツッ君〜っ』





 
部屋着に着替えたきょんさんは10代目に泣きついていた。




 

「いや…ほら。獄寺くんもわざとじゃない訳だしさっ?許してあげなよ。」






10代目がそういうと、きょんさんは じとっ と俺の方を睨む。






「すみませんでした…。今度なにかお詫びをさせていただきますから。」





悪気はなかったとはいえ、悪いことをしてしまったと思う。






きちんと謝るときょんさんは渋々 こくん、と頷いてくれた。







でも、改めてよく見るとこの女の子は、10代目によく似ている。






10代目と同じ色の髪の毛を肩当たりまで伸ばし、





キュッと結んだ口元はさくら色、





目なんかは10代目そのままだ。






10代目をもうひとまわり小さく、柔らかいイメージにしたその子は相当…






「…可愛い。」






「「えっ?」」



ふたりがはもる。




「あっ…」




俺はつい口に出してしまったらしい。





10代目ときょんさんはおんなじ顔をして俺を見ている。






そしてきょんさんの顔はどんどん真っ赤になっていき…






『つっ…ツッ君!やっぱこの人変だよっ…!』






きょんさんはだだだだっと二階へ上がって行ってしまった。





え…今のはまさか照れ?






「あーぁ…行っちゃったね。きょんって昔っからすごい照れ屋なんだよな。ごめんね獄寺くん…あっ!」






10代目がいきなり声をあげる。





「どっ…どうしたんですか?」






「おつかい頼まれてたの忘れてたぁ〜っ!ごめんっ!ちょっと行ってくるから待ってて!いってきまーすっ!」





「えっ…待っ…」





ばたん。





10代目は光の速さで行ってしまった。ひとり残された俺はどうすればいいんだ…。





しばらくボーッとしながらお茶を飲んでいると、





二階から降りてくる足音が聞こえてきた。




カチャリ…



控えめにドアが開く。



きょんさんの顔がドアの隙間からのぞきこんでいる。







『あの…』




「…はい?」





そう返事をするとひょこひょことリビングに入ってくるきょんさんは歩き方まで10代目にそっくりだった。






そしてその手には救急箱が抱えられている。






『手…見せてください。ばい菌入ったら大変です。』





「え…」





俺の手当てをしてくれるのか?
…意外に優しいとこあるんだな。






なんて思っていたのもつかの間…






『猫にひっかかれるなんてどんくさいですね。強そうなのは見かけだけですか?』





ぷちーん






俺の中で何かが切れた音がした。






「きょんさんだって風呂場で思いっきり転んでた気がするんスけど、気のせいでしたかね?」





こいつの裸が俺の頭にフラッシュバックする。





…こいつの言うとおり俺って変態なのか?





『っ…!?その話はやめてください〜っ!』





と、俺をリモコンで叩いてくる。





真面目に痛てぇんだって…。





『…あと、敬語とさん付けも気持ち悪いからやめてくださいね。』




顔は10代目にそっくりのくせに性格はまるでちげえ…





初対面でこんだけ言ってくる女は初めてだぜ。






続く
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