短編
□大好物
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「いたたた…えっと…こちらを右に…?ん…?」
『あのー…』
私は、さっきからメモのような紙を見ながらふらふらと危なっかしく歩く少年をハラハラしながら見ていた。
ついに電柱に激突したので、見かねて声をかけたのだ。
*
大好物
*
「はい!なんでしょう!」
おでこを赤く染めながらにっこりと私に微笑む少年…。
日本人じゃない…よね。
でも上手に日本語を話す。
不本意ながら可愛いとか思ってしまった。
『あなたもしかして迷子…とかですか?』
「えっ…?あ!はい!実は拙者、ある人と待ち合わせをしているのですが、道が分からなくなってしまいまして…」
に…21世紀に拙者…?!
驚く私を無視し、持っていた紙をぴらりと見せてくる…が、
『な…なにこれ?暗号かなにか?』
「これは待ち合わせしている親方様が書いてくれた地図でござる!」
ござる…
て言うかその地図、子供の落書きにしか見えないんだけど…。
『これじゃあ迷う訳だよ…待ち合わせ場所がどこだか分かる?』
「分かりませぬ!」
『えーっと…』
迷子の子猫ちゃんじゃあるまいし…
困ったなぁ…
「あ!ですが!!!」
『ひぇっ!?』
突然大きい声を出すものだから驚いて変な叫び声をあげてしまった。
「あ…かたじけない!驚かせてしまいましたか?」
私の身長に合わせてかがんで謝ってくれる少年。グッと顔が近づいてドキッとしてしまった。
反射的に少し視線を逸らす。
顔が整っていて愛嬌がある。
『い…いえいえ!!…で?何か言おうとした…?』
「あっ、はい!!多分沢田殿の家に行けばなんとかなると思います!」
『…沢田殿?』
「はい!知り合いなのですが…流石に分かりませんよね…自力で探してみま…」
『もしかして沢田綱吉…?』
そんな訳な…
「えっ…あ!!そうです沢田殿です!な…何故?!」
!!
『わ…私、きょんって言うの。…沢田…きょん。ツナ兄のいとこ。』
そう言うと彼は目を見開いた。
まさかこの時代劇みたいな外国人が、ツナ兄の知り合いだなんて…。
とりあえず私は家に案内することにした。