短編
□MOON
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敵マフィアがなにやら企んで、怪しい実験をしているらしい。
今回の任務は、その実験所をブッ飛ばす事。
「しっしっし!殺戮ってまじ好き!!」
「ゔぉぉい!おっ始めるぜぇ!!」
バッ
俺が飛び降りると、ヴァリアー全員それに続いた。
ボスは今頃アジトで寝ている。
強いやつと戦えるなら喜んで動くボスも、科学者の殺戮には興味を示さなかった。
飛び降りた研究室には、怪しげな色をした薬品や変わった動物などがいた。匣兵器にするつもりか。
俺らを目にすると科学者共は武器を構えたが、暗殺を仕事にしてる俺らに敵う訳がねぇ。
俺は手当たり次第に斬り倒して行った。
科学者A「な…なんだ貴様らは!?ぐ…ぐぁぁっ…」
「ヴァリアーだぁ!!クソ科学者共ぉ!!三枚におろしてやるぅ!全員まとめてかかってこぉい!!」
科学者B「ゔ…ヴァリアー!?逃げろっ!!」
「ム…逃がさないよ。」
「ししししししっ!!」
瞬く間に科学者共はなぎ倒されて行った。
「ちっ…手慣らしにもならねぇぜ。」
チャキ…
剣を鞘に収めて、ふぅっとため息をひとつつくと…
くぃっ…
「!?」
シャツの裾を引っ張られる感覚。近くに気配はないと思っていたから驚いて剣を構えようとするが、そこにいたのは…
『たすけにきてくれたの…?』
自分の身長と同じくらい長く伸ばした、ピンクがかった綺麗な白髪に、白い布をまとっただけの小柄な少女。ベルと同じくらいだろうか。
肌は真っ白く、目隠しをされて、足首を鎖に繋がれている。
多分実験体にされていたのだろう。白い腕には注射の痕のような傷がたくさんあった。
ヂャリンッ
剣を脱いて、足に繋がれた鎖を切ってやった。
「…お前は自由だぁ。好きな場所へ行けぇ。」
そう言っても何も言わずに俺の裾を掴んでいる。
「あれ、スクアーロ作戦隊長。なにそれ?」
返り血をたくさん浴びたベル。
「俺が聞きてえぇ。まとわりついて離れねぇんだぁ。」
『スクアーロさくせんたいちょ…?』
「うししっ!懐かれてやんの!」
「ゔぉぉい…」
ちょっと待ってくれぇ…
『きょうは…満月、ですか?』
「んん?」
空いた天井から空を見上げると、綺麗な三日月だった。
「今日は三日月だぁあ。だがそれがどうしたぁ?」
『満月…じゃない…』
そう言うと少女はするすると目を覆っていた包帯を解いた。
あらわれた大きな瞳は赤く艶めいていた。その目で俺を見上げると…
『スクアーロさくせんたいちょ…ありが…と。』
「!!?」
なんと少女は俺に向かって、にっこりと微笑んだのだった。
「ねぇ、名はなんて言うんだい?」
『とんでる…』
マーモンが寄っていくと少女は興味を示したようだった。
『私…A-005って…』
それは…実験番号か何かじゃねぇか。
「そんな名前は忘れろぉ。お前は…きょんだ。」
俺は少女を抱き上げ、歩き出した。
「任務完了だぁ。帰るぞぉ。」
『きょん…?』
「え、作戦隊長そいつ連れてくの?」
『きょん…』
そうつぶやいて、ふふっと小さく笑った。
それが俺ときょんの出会いだった。