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□試すような真似しても無駄
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朝。黄瀬の部屋に着信音が鳴り響く。
『オイ黄「ごめんなさいッス青峰っち!今日先に予定が入ってて…!埋め合わせはちゃんとするッスから!」
恋人である青峰からの電話だとわかると即座に黄瀬は適当な理由を述べて電源ボタンを押す。
それから黄瀬は一つ溜め息をついてアドレス帳を開くと頼れる彼にメールを送った。
「…で、何故その流れで僕を呼び出すんですか」
あれから一時間後、黄瀬は黒子と向き合ってマジバの机に座っていた。
ちなみに机の上にはバニラシェイクがいる。
「だ、だって〜」
何時も色んな理由で呼び出される黒子だが、相も変わらず青峰絡みだったことに溜め息を一つ。
何でも今回黄瀬は不安になってしまったそうだ。
尻尾を振って青峰に飛び付く黄瀬だが、青峰はそういった意志表示は全くしない。
必要な時だけ、しかもほんの少ししか愛の言葉を囁いてくれないそうだ。
多少わからなくもない黒子はキセキの末っ子の為に一肌脱ぐことを決めた。
「仕方ありませんね。僕が一肌脱ぎましょう。ちょっと待って下さい」
「ありがとうッス黒子っち!」
嬉しそう笑う黄瀬を後目に黒子は携帯を取り出すと某動画サイトにアクセス、検索をする。
そして表示させたそれを黄瀬に見せた。
「…何スかコレ」
「BLのドッキリ用動画です」
「ぶっ!」
「汚いですよ黄瀬君」
吹き出した黄瀬に携帯が危ないと上に上げると、涙目になりながら黄瀬は続けた。
「だ、だって!え、マジで何するんスか黒子っち!そんなんで!?」
「とりあえずここじゃマズいので出ましょう」
携帯を一旦しまい、黒子がバニラシェイク片手に外に歩いていくのを慌てて黄瀬が追う。
着いた人気のない公園のベンチに座るとバニラシェイクを一口含んでから黒子は説明を始めた。
「この動画は要は…、その襲ってる側の声だけが収録されています」
「えっと、つまり?」
「つまり、このドッキリ用動画と黄瀬君の喘ぎ声を合わせて、録音してから青峰君の電話に流せばバッチリですよ」
「いやいやいやバッチリですよじゃないッスよ!それに、その…喘ぎ声とかは…」
「グチグチ煩いですよ。そこら辺はパーフェクトコピーで何とかして下さい。あ、後絶対僕の名前は言っちゃダメですからね」
両手を差し出してニヤリと笑った黒子は確かに悪い笑みを浮かべていた。
*
黄瀬にも会えないし、ブラブラと街を歩いていると黄瀬指定の着メロが聞こえて携帯の通話ボタンを押した。
『あ、やっ…!あおみねっち、助けてっ…!』
「黄瀬!?」
突然の黄瀬の声に青峰は街中にも関わらず一人声を上げる。
『無駄だぜ?そんな奴来ねぇよ』
『ひゃ!あぅっ!いや…っ』
電話越しに聞こえる喘ぎ声でわかるのは自分が見ず知らずの誰かに黄瀬が致されているってことだけだ。
『のわりには此処、凄いことになってるけど?』
『やめて!さわらな…んっ!』
『そろそろイくか』
『な、何…?やめてっ!いやああっ!』
ツーツーツー…
ブツっと切られた電話片手に頭に血が登るのを感じ、青峰は体裁も気にせず走り出す。
「くそ…っ」
黄瀬が危ない。
自分以外の奴にヤられるなんて許さない。
…本当は自分がちゃんと繋ぎ止めておけば良かったんだ。
そう思った途端、頭がクリアになる。
何かがおかしい。ふと野生の勘で思い当たった。
そう言えばさっきの電話、やたら録音したような砂嵐の音がしていた。
確信を得た青峰はほくそ笑んで携帯を取り出すと折り返し電話をかける。
「試すような真似しても無駄だぜ?黄瀬ェ」
電話の向こうでは息を飲む気配がした。
【試すような真似しても無駄】
「…でも流石に一回は頭真っ白になった」
「…そうッスか」
「もうすんなじゃねーぞ。あんな思いゴメンだ」
「…はいッス!」
title.確かに恋だった