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□言の葉を積もらせずとも
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俺は水戸部が好きだ。

勿論likeじゃなくてloveの意味でだよ?

優しくて、あの大きな手で撫でられるのが好きだった。

心配そうにしながらも兄のように微笑むのを見るのが嬉しかった。

俺だけ彼の声が聞こえるのを特別に感じてた。


ねぇ神様。


この結果は愚かな俺への業ですか?





朝の爽やかな風に夏の暑さも収まって来たなんて思いながら体育館の扉を潜ると、そこには早くも着替えて自主練をしている日向達がいた。

「おはよー!!」
「はよー」
「おはよーコガ」

コートでボール水戸部を見つけて、今日もやるぞ!と水戸部に飛びかかる。

「おはよう水戸部!」
「っ!………」
「アハハ、大丈夫だって!」

すぐさまそう切り替えすけど何か違和感を感じた。
例えるなら背筋が氷るみたいな、圧倒的な違和感。

「………?」
「え…、何?水戸部…」
「…………」

尋ねてみても返されるのは無言の返答のみ。

何時も聞こえていた水戸部の声が、全くと言っていいほど聞こえない。

「ねぇ聞こえない。聞こえないよ水戸部…っ!」

テレパシーのように伝わっていた水戸部の声が聞こえなくて、どうしてか全然わからなかった。

縋るように俺が水戸部の服を掴むと混乱する頭は正常な答えを出そうとしてくれない。

「何でっ」
「コガ落ち着け!」

日向に肩を引っ張られ、水戸部から離れると自然と水戸部を見上げる。

水戸部は瞳に困惑と悲しみを映し出してるように見えて、それが余計つらくって涙が零れた。

「ごめん…っ。ごめんね水戸部ぇ…」

俺はただコートの真ん中で悲しみに暮れるしかなかった。





授業も何時も通り受けて、昼もご飯一緒に食べるけど何回やっても水戸部の声はやっぱり、

「聞こえない、か…」

練習も終わり、水戸部達は残って自主練をしている。
俺はそんな気にはとてもなれなくて、それでも水戸部と一緒に帰りたいから部室のベンチに座り、足をぶらぶらさせていた。

「コガ」

ドアノブの捻る音がしてそこに練習着のままの伊月がいた。

「…伊月?どうしたの?」

些か反応が遅れたけど、明るく伊月に問うと伊月が俺の隣に座り込んだ。

「大丈夫か?」
「…うん!ダイジョーブ!」
「嘘つくなっ」
「あいたっ!うっ〜」

普段のじゃれあいのみたいに頭に手刀が落とされて思わず唸る。

伊月は眉を下げると真剣な瞳で俺に尋ねてきた。

「コガ、お前水戸部のことどう思ってんの」
「好き」

即答で答えた俺に伊月は面食らったように目を見開く。

「好きだよ。…えっと、勿論そっちの意味で」
「…言わねぇの?」
「そりゃ水戸部は男で俺も男で…、バカだってわかってる。叶わないってわかってる…!それでも水戸部が好きなんだ…っ」

ポンと頭に伊月の手が乗って、慰めてくれるように数度優しく叩かれた。

俯く俺にため息を吐くと伊月は出口のドアに向かって声をかける。

「だってさ、水戸部」
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