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□熱中症にはご注意を!
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夏場の体育館は時間がたつにつれ蒸し風呂に変わる。
当然のようにキツいバスケ部の練習に漸くカントクであるリコの休憩のホイッスルが響いた。

「五分休憩ね!各自しっかり水分を取ること!いいわね!」

すぐにクーラーボックスに走る部員もその場に座り込んで息を吐く部員もいる。
その一人である火神はクーラーボックスに近づくといち早くまるで母親のように甲斐甲斐しく世話を焼く水戸部からスポドリを貰っていた。

「火神」
「何スか?」
「黒子に持ってってやれよ」

そう言って火神が日向から新しいスポドリを受け取ると辺りを見回して黒子を捜した。

生粋の影の薄さで眩ましてるかと思いきや案外早く見つかって拍子抜けした。
案の定というか体育館の隅でへばっていた黒子に近寄るが何の反応も見せない。

「黒子ー?起きろよ」

揺さぶってみると「う…っ」と呻き声が聞こえたが自ら動こうとしない。

取りあえず水分を取らせようと頬を軽く叩いてまた呼び掛けるとようやく水色の瞳は姿を現した。

「黒子?」
「きもち、わるい…」

それだけ言うとまたゆっくり瞼を閉じてしまう。
途端に嫌な予感がして火神は取り敢えず黒子を仰向けに寝かした。

「カントク!黒子が…!」
「どうしたの!?」

黒子を見て走り寄るリコに余計に火神の不安を煽る。
リコは黒子の頬に触れると途端に険しい顔をして指示を飛ばした。

「火神君は出来るだけ揺らさずに黒子君を保健室に運んで!
水戸部君はクーラーボックスから氷とスポドリ持って来て!小金井君はそれの手伝い!」
「カントク俺は!?」
「日向君はこっちに残って!伊月君後よろしく!」
「イエッサー!」

黒子の様子を見てもまだ意識はあるようだが、汗をかいていない。あの地獄のようなメニューをこなして、だ。
それが余計に深刻さを醸し出していた。

伊月の声を受けて真っ先にリコは外に走り出すと火神は黒子を横抱き、要はお姫様抱っこで体育館を出る。
廊下で誰かが騒いでた気がしたが取り敢えずは無視だ。

保健室に入ると冷房がきいていてガンガンに冷えていた。

「火神君こっちに寝かせて!ゆっくりよ!」
「うっす」

ベッドの上に黒子を寝かせると改めて見ると顔色がすこぶる悪い。
それが火神の不安を煽る。

「黒子君聞こえてる!?」

リコの声にも意識はあるが唸るだけでよっぽど酷いらしい。
まだ意識がある分幾何かましだが。

「水戸部君スポドリ取って!」

すぐに水戸部が取り出して渡すとリコが途端に困ったような顔をした。

「どうしたんだ?」

気が動転して敬語が抜けてしまっている火神に対してリコは早口で説明する。

「黒子君意識はあっても身体動かないから自分じゃ飲めないのよ。早く飲ませなきゃいけないのに…!」
「………。
ちっ、仕方ねぇか」

リコの手から火神はスポドリを奪うと口に含んでそのまま黒子の口に合わせた。
顎を上げさせて黒子が飲み込むのを確認するとゆっくりと離れていく。

彼女達は唖然としてその様子を見てるしかなかった。

それを何度か繰り返した頃黒子の容態が少しばかり収まり寝息が聞こえ始めた。
火神が息を吐き、黒子の頭を撫でるとふにゃりと黒子の顔が和らぐ。

「…じゃしばらく黒子君お願いね」

ようやく戻って来たリコがそう言いながらドアを開けると水戸部もその後を追った。


取り敢えず言えること。
熱中症には注意しろよ。


【熱中症にご注意を!】


(黒子君もう大丈夫?)
(はいお陰様で)
(ところで昨日のこと覚えてる?)
(…火神君に持ち上げられた所辺りまでは)
(…じゃあ二人のご関係は?)
(…?同級生でチームメイトで僕の相棒ですけど…?)
(こいつらまだ付き合ってなかったの…!?)
 

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