965

□微睡みの中で
1ページ/1ページ

暖かい日溜まりの中、雰囲気を壊さないように一定の距離を保ったままその場は成り立っていた。

黒子の部屋には将棋の駒を置く音や本のページを捲る音、それにもそもそと菓子を食す音が聞こえる。

彼は本から少しだけ目を離し自分の部屋の異様だけれど、当たり前のように存在する空間に目を向けた。

中央では赤司と緑間が将棋盤に目を向けていて、今は緑間が押されているようだ。
それを紫原が興味なさ気に菓子を貪りつつ眺めている。
青峰はと言うと欠伸を漏らし、黒子の部屋なのに堂々とベッドを占領して寝っ転がっていた。
その隣では珍しく大人しい黄瀬が携帯をいじっている。

先程はどっちがベッドに乗るかで争っていたが結局二人で乗ることにしたらしい。

それを目に納めると暖かい日差しに誘われて黒子は目を閉じた。

「あれ、黒子っち寝ちゃったッスか?」

黄瀬がベッドの上から言っても水色の頭は船を漕ぐだけで返事をしない。

「黄瀬ちんベッドで寝せてあげたらー」

菓子の袋を破りつつ紫原が言うと「そうッスね」とベッドの縁に寄りかかって寝てる黒子の本を机に置いた。

「よっ、と」

黒子を持ち上げても何も反応しない。よっぽど寝入ってるようだ。

真ん中でふてぶてしく青峰が寝てしまっているので黒子を自分とは反対側に優しく下ろすと、体温が気持ちいいのか何時もよりふやけた表情で青峰にすり寄った。

可愛いなぁと思いながら黄瀬は黒子の頭を撫でると睡眠の邪魔にならないよう青峰の右側で寝転がる。

先程から全く起きる気がない青峰の頬を面白半分でつつくとちょっぴり眉を寄せて思わず面白いと思ってしまった。

そんなことをしているうちに黄瀬も眠くなって普段の疲れもあってか眠りに落ちた。

「おや三人とも寝てしまったみたいだね」

赤司がふと顔を上げると仲良くベッドの上で寝ている仲間達が目に入る。

三人は掛け布団も掛けずにまるで兄弟のように寄り添って寝ていた。

いくらこの暖かい気候でも風邪をひいてしまうだろうと赤司は腰を上げた。

「緑間一回中断だ」
「何なのだよ」

勝てなくて少し苛立った声を漏らした緑間は赤司の普段あまり見られない優しい顔に同じように目を向けた。

「仕方ないな」

クスクスと笑いながら彼らに歩み寄ると近くにあった掛け布団を掛けてやる。

紫原も三人を見て「黒ちん達子供みたーい」とちょっとだけ笑う。

「そうだね」と赤司が答えて再び笑みが深くなる。

緑間はそっと息を吐き出し、この光景が何時までも続くといいとそっと願った。


【微睡みの中で】


(赤ちん携帯持って何してるの?)
(ん?永久保存してるところかな)
(……せめて音はたてないことなのだよ)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ