965long2

□好きだったよ、好きなんだよ
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俺、最低だ。


何も知らない日向に八つ当たりするなんて。
日向は何も悪く何てないのに。

俺がただみっともなく想い続けただけで。


体育館から離れた中庭は雨が降っているだけあって誰もいない。
建物の壁に寄りかかる。

雨の音と、俺の荒い息だけが耳につく。
いつもはこれ以上に走ったって息切れなんてしないのに。

「伊月っ!」
「ひゅーが…?」

壁から手を離し振り返ると、雨の中走ってくる日向がいた。

今は、日向に会いたくない。

「っ!」

反射的に雨水の跳ねる地面を蹴って走り出そうとする。
ところが、日向に手を掴まれて逃げることが出来ない。

せめてもの抵抗に日向に顔が見えないように俯いた。

「こんなに長く外にいたんだな…」

前髪の隙間から日向を伺う。


何で日向が泣きそうな顔してるの。


日向は伊月の手を自分の体温を移すように包み込んだ。


優しさは、時には残酷だ。


その優しさが好きな筈なのに。

苦しくて、苦しくてたまらない。


もう、限界だった。



「好きだったよ、日向」



本当はまだ、諦めきれないんだ。
諦めようとすればする程、気持ちは膨らんで、許容量何か遥かに超えているというのに。

限界値が未だに見えないなんて。


【好きだったよ、好きなんだよ】


せめて、気持ちを伝えることだけは許して下さい。



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