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夏が好きだった。



夏は俺の世界に色をくれた人が、一番輝いて見えた季節。

群青の夜空に散りばめられた星空に何度も手を伸ばした。



届かない。



ずっと。俺の声はもう。

そして、これからも。



戻らない。



あの夏はもう――…。







8月の猛暑。
本当だったらもう夏休みなこの日。
俺はわざわざ学校で補習を受けていた。


理由は…、まぁアレだ。アレ。


さっさと補習終わんねーかな。
あ゛ー。バスケしてぇなぁ。
いっそサボリてぇ。


『ちゃんと補習出ろよ青峰』


一瞬ですげぇ怖い顔で赤司が怒るのを想像できて背筋が寒くなった。


ツン、ツン


背中をつつかれる。
後ろは黄瀬だ。
俺は無視した。


ツン、ツンツンツンツン


「だー!もうなんだよ!」


小声で振り返れば、黄瀬はやっと振り返ったッスね、と笑った。

「今夜暇ッスか?」
「んあ?別に暇だけど…どうした?」

黄瀬はいたづらを思いついたような顔をして笑った。

「夜学校に忍び込もうと思うんスよ!」
「なんで忍び込むんだよ」
「えー気分?
ってか星見たいんスよ!」

で?と聞くように首を傾げる。
黄瀬は俺がYESと言うのを今か今かと待っていた。


まぁ悪くないかもしれない。


そう思いながら俺は教室から見える太陽の光に反射されて光るプールを見た。

「なぁせっかくだから夜のプールに入って見ようぜ」
「プールッスか?」

黄瀬が首を傾げるのを見て、俺は得意気に笑うと続けた。

「この頃暑いしな。夜のプール冷てぇと思うし。それに夜のプールに入りながら星見るのも良くね?」
「そうッスね!青峰っちにしてはいいこと言うっ!」
「おいコラ」

何気に失礼なことを言われた気がして、頭を鷲掴みにしようと手を伸ばす。

「青峰!前向いてろ!!」

が、先生が名指しで俺に言うからそこまでにして、俺は前を向く。

一生懸命先生が何か言っているが、頭の中では夜と、この後参加するバスケのことしか考えていなかった。




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