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□甘すぎるお菓子は緩く溶けて
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大きくなりたい、何て望んだこともなかった。


それなのに身体は自分の意志に反してどんどん大きくなっていった。
まだ子供でいたかったのに身体はそれを許さないとばかりに伸びていく。

いつの間にか俺の身体は皆を見下ろせる程大きくなって力も強くなっていった。
何をやるにも手加減を、注意をしなくちゃいけない。
やっぱり周りも俺を子供ではいさせてくれなかった。


次第にそんなことも忘れていって、俺はバスケに出逢った。
ただ身長が高くて面倒くさいけど運動神経も良くて。だからボールをリングに入れるの何てカンタンだった。
俺はすぐに楽しみをなくした。


そんな俺でも好きだったもの。

それはお菓子。
子供の象徴とも言えるお菓子だ。

塩辛いスナックも好きだったし、甘くて色鮮やかなキャンディも好きだった。

甘くて柔らかくて満たされる。

俺は子供になれなかった欲求をそこで満たしていた。


何となく続けていたバスケだけど今はバスケをやって良かったと思う。
じゃなきゃ室ちんに逢えなかったもの。


室ちんは俺を甘やかしてくれる。
それこそ暖かい春の布団の中の微睡みのように。

俺は子供扱い何てあまり受けたことがなかったから最初は戸惑った。どうしていいかわからなかった。

でも室ちんはまるで兄のようにそれこそ母のように包みこんでくれた。
だからすっかり俺も甘えちゃって。

好きになるの何て時間がかからなかった。
その好きが友愛だとか恋愛だとかはよくわからなかったけど、とにかく室ちんが好きだった。


陽泉が誠凛に負けた試合で室ちんは泣いた。


お前が羨ましい。

そして与えられたギフトがあるのに本気で戦おうとしないお前が憎いのだ、と。


その時になって始めて、室ちんが弱いのだと知った。
奥底で俺は室ちんはとても強いのだと思っていたから。

室ちんは俺を通して義弟を見ていた。でもそれでも構わなかった。

だって俺はそんな室ちんが好きだったから。


今だって友愛なのか恋愛なのかよくわからない。
でも抱き締めたいとか甘えたいとかキスしたいとかって友愛じゃ納まりきれてないよね?


俺はホントは誰より俺と似ている室ちんが好きになった。


大人になりきれなかった子供。


それは俺も同じだったから。


「室ちん室ちん」
「どうしたんだアツシ」
「大好きだよ」


【甘すぎるお菓子は緩く溶けて】


今度は甘すぎる愛を頂戴!


title.stardust


―――
「大人になりきれなかった子供」の関連話。
二人の性格は正反対でも根底が同じって書きたかったんだけど…アレ?
 

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