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□愛想笑いに疲れた君に
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朝練がなかったある日、クラスに来て見渡せば何処かしらで騒がしくしている高尾が見当たらない。
とりあえず鞄を置き席に座ればクラスの女子が近寄って来て俺にこう言った。
「今日高尾君お休みなんだって」
女子生徒はそう言って去ると俺は思わず溜め息を吐く。
「今日も、か…」
今日も、と言う表現は確かにあっている。
時々だが高尾は学校を休んだり、そうじゃなかったら授業を抜け出したりする。
理由はわからないが人事を尽くせとはよく言っている。
何時も真ちゃん真ちゃん、と騒がしい高尾がいない1日は長く感じた。
もし俺が高尾のように口達者であったのなら。
ifの話はあまり好きではないが、未来を予測する上では大切だよ赤司は言っていた。
話を戻すがもし俺が口達者であったのならこれほどまでに俺は高尾を気にしなかっただろうし、惹かれなかっただろう。
そうでもしなかったらわざわざ高尾の家のドアの前になんていない。
そして俺はインターホンを押した。
*
どうしても今日は学校に行きたくなかった。
学校が嫌いな訳じゃない。
むしろ友人はいっぱいいるし、勉強はあんま好きじゃないけどバスケだってできる。
それでも俺が学校に行きたくない理由。
それは緑間真太郎にあった。
俺の友人は広く浅く作るが基本…だった筈だったんだけど緑間だけはそうはいかなかった。
「マジで馬鹿じゃねーの俺…」
俺の思考を断ち切るように部屋にノックが響く。
はい、と返事をしようとして聞こえた声に息を呑んだ。
「高尾、開けろ」
「しん、ちゃん…?」
何で緑間来ちゃったんだよ。
俺が何も答えないでいると再び扉をノックする音が響く。
「もう一度言う。高尾、開けろ」
「真ちゃんマジ止めろって。風邪移るっての」
辛うじて出た声は微かに震えて、でもちゃんと聞かなきゃわからない程度だと自分に言い聞かせる。
擦りすぎて赤くなっているだろう目を瞬かせるが痛い。
ドア越しにハァ…と溜め息の音が聞こえた。
「……帰る」
遠ざかる足音がしてホッと息を吐き出してドアにもたれかかる。
風邪じゃないだるさを持つ身体を起こし、確認の為ゆっくりドアを開けた。
すると何処からか伸びてきた手が俺の腕を掴んだ。
「やっぱりなのだよ」
先を辿ればそこには俺の大好きな真っ直ぐに俺を見る緑間がいた。