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□訪れを知らせる
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誠凛高校の一期生が卒業して数年がたった。

あの頃から随分衰えてしまっていた身体はもうすぐに融通がきかなくなるだろう。

新設校である誠凛に最後の赴任をして入学式も終えたある日、彼らは私の元にやって来た。
まだ真新しい制服を来た彼らは「バスケ部の顧問になって欲しい」と言い出した。
私はこの老体だ。顧問は何処も受け持つことは出来なかった。

バスケの経験も何もなかった私は最初、断ろうと思った。
しかし彼らの目は真剣で逸らすことはできなかった。
結果として私は彼らの熱意に答え、私はバスケ部の顧問になった。


聞き慣れたチャイムが鳴る。

さて、誰だろうか。



「お久しぶりです武田先生」

一期生の後輩となった彼は光と賞した彼と共に上へ上と目指し続けた。

卒業した今も彼はたまにひょっこり現れては取り留めのない話をして帰っていく。

教壇を降りてからも会いに来てくれる生徒がいることは喜ばしいことだ。


庭には可愛らしい梅の花が太陽の光を浴びていた。
もうそろそろ桜も咲くだろう。


「もう桜の時期ですね」


また誠凛高校には新しい生徒が入ってくるのだろう。
そしてそれぞれに物語をつくっていのだ。



春は、もうじきやってくる。



【訪れを知らせる】


私はもう見守れる立場にはないが、目を閉じれば昔のことも今のように思い出せるものだ。
 

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