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□僕は世界一幸せだ
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空に飛行機が横切る。

旅立ちに相応しい綺麗な青空だった。


火神君は、アメリカに行く。
大好きなバスケをもっと極める為に。

僕は日本に残る。
自分の夢を叶える為に。


「行ってらっしゃい。火神君」

いってくる、と僕の頭を一撫でして火神君はアメリカに旅立っていった。







僕は持ち慣れない鍵を取り出し、鍵穴に差し込んで回す。
一人きりで入る火神君のマンションはとても広く感じた。

火神君はマンションだから使ってもいいと言った。
僕もそろそろ親元から離れ自立したかったから頷き、ここで彼の帰りを待つことを決めた。

「とりあえず…、掃除でもしましょうか」

と言っても火神君が旅立つ前に粗方綺麗にしてしまっていたが、何かしていないと不覚にも火神君ばかり思い出してしまいそうだった。

手始めにベランダを開ければ去年の春、二人で蒔こうと決めた花の種が咲いていた。


寂しくないなんて言ったら嘘になるけど火神君は旅立つことを決めた。
だから僕は此処で待つと決めた。


春らしい暖かな風がすり抜ける。
火神君の部屋のドアを開ければ彼がいた時よりすっきりしていた。

『黒子!』

瞼を閉じれば火神君が今にも呼びかけてきそうな程、此処には火神君がいっぱい詰まっている。

窓を開ければカーテンは柔らかな風に揺られて踊るように舞う。
流石にはためき過ぎて邪魔になるからと備え付けの紐で纏めるとベッドサイドにあるものを見つけた。

「これは…」

藍色の重厚そうな小さな箱。

何処かで見たな、と思うのは気のせいだろうか。

小さな箱があるその場所はいつも僕が火神君と寝る時、アラーム用に携帯を置いていた場所だった。
持ち上げれば何か入っているようで、中に何が入っているのか気になった。
気になりだしたら止まらなくて、悪いなとは思いながらもゆっくりと藍色の箱を開けた。

開けると光で色を変えるガーネットのついた指輪が入っていた。


その深紅の色は火神君の色だ。


ひらりと風に舞って落ちた紙を拾えばそこにはこう書いてあった。


“ガーネット
「秘めた情熱」
ヨーロッパでは戦場に赴く戦士が恋人に再会の証として渡したとされる”


「……?」

どうやらこの宝石の由来らしくよく分からずに裏返して見ると見慣れた火神君の字があった。


“由来見たか?
指輪なんて重てーかもだけどコレを付けていて欲しい。

必ず帰って来るから待ってろ。

お前が夢を叶えて俺も夢を叶えた時迎えに行くから。


I love you. ”


「火神君…!」


重く何かないです。

今すぐ会って抱きつきたい位嬉しいんです。

柄にもなく嬉し涙何か流しちゃってるんですよ?


よく見るとガーネットの指輪の隣はもう一つ入っていたようで窪んでいた。

指輪を左手の薬指に通せば驚く程サイズはぴったりで。
無機質なもののはずなのに指輪は熱を持って暖かかった。



「愛してます…火神君」



君と出会えて

君とバスケができて

君と愛し合えて



【僕は世界一幸せだ】



空を見上げ、あまりの眩しさに左手を翳せば手の影で透明度の高い水色が存在を僅かに主張する。

まるでアイツみたいだな。

影が薄い癖に本当は気づいて欲しいと思っていて。
それでも淡くも輝かしい光を放つ。
まるで空に溶け込んでしまいそうなそれは



俺とお前を繋ぐ、証。



end



遠く離れていても、空は繋がっているから。



―――
卒業シリーズ第二段。
実は「僕らは一緒に大人になる」とリンクしてます。
mainにあるんで見てみて下さい。
ちなみに火神がつけてるのはアクアマリン。
「幸福をもたらす」と言われ、透明非常に薄い水色から濃い水色まであって、海色の宝石だから海に投げ込むとすぐ溶け込んでしまう、とのことです。
調べたけど曖昧ですね。
互いの色のものをつけるっていいよね!
 

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