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□差し出された手
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「…だって、もっと強くならなきゃ俺は俺を許せない…!」

俺がもっとうまくゲームメイクできたら。
俺がもっとうまく鷲の目を使えれば。


勝てたかもしれない。


少なくともトリプルスコアで負けることなんてなかったのに。

木吉が怪我することだってなかたかもしれない。
俺がもっと強ければ日向がバスケから逃げることだってなかったかもしれないのに。


また、負けた。


中学生の頃、強くなろうって決めたのに、身体はついて来てくれない。
鷲の目は俺の言うことを聞いてはくれない。


悔しい、悔しいんだ。
もっと、もっと強くなりたい。


「悔しいのはオメーだけじゃねーんだよ、ダァホ」

その台詞の後に来たのは額に軽い衝撃。

デコピンしやがったな、日向。

思った以上に痛くて、さすろうと手を伸ばすと代わりに日向の手が俺の額を、髪を撫でた。

「彼処で練習してる奴らだって、今病院にいるアイツだってホントは悔しくてたまらないんだ。
でも次勝つために俺達は練習してんだろ?」

俺に、自分に、言い聞かせるように日向が言う。

髪を梳かれ続ける。

安心する、なんて思って。
気がついたら入っていた力も抜けて行って。
固くなっていた心もほぐれていく気がして。

「安心しろ伊月。…もう俺は逃げねぇよ」

一筋涙が伝う。
耐えきれなくなった涙は目に翳されたタオルに吸収されていく。
きっとタオルの水分濃度は被せられた時よりも上がってるかもしれない。
俺は言葉にならない嗚咽を洩らすしか出来なかった。

「日向、ごめ「しばらく寝てろ」
「ん…、わかった…」

謝りの言葉は遮られて出すことは出来なかった。

日向に寝ろと言われたらすぐにでも寝れそうな気がしてどんどん意識は吸い込まれていく。

せっかく二人っきりなのに勿体ないかも、なんて頭の片隅で思って。

「日向、ありがと」

タオルで日向は見えなかったけど、笑ってくれてたら嬉しいな、なんて思ったりして。


ああ、きっと次起きる時は笑顔で日向の隣に立てる。


それまでおやすみなさい、日向。


【差し伸べられた手】


不器用で、優しい日向。
そんなお前だから俺は一緒にいたいって思ったんだ。


title.『』


―――
続き…‖ω`)チラッ
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