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□スイートチョコと真っ赤な少年
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「なあ今吉」
「何や諏佐」
「…お前、そんなにSMプレイ好きなのか」
「………はぁ?」


【スイートチョコと真っ赤な少年】


「諏佐勉強のし過ぎで頭疲れとるんとちゃう?ちょっとは休め。な?」
「そうじゃない。今吉アレ見えてんだろ」

周りは皆受験の控える三年生だと言うのに何処か浮き足立った空気。
そう今日は日本某製菓会社の策略の混じるバレンタインデーだ。男はそわそわし、女はきゃあきゃあ騒いでる。
そこに例外一人。

「あーアレか」

ニヤリと笑った今吉の目線の先には三年棟に来て柱の影でオロオロしている桜井だ。流石に目立つ。

「見えとるで。バッチリ」
「おい…」

諏佐は自由奔放過ぎる今吉に溜め息をつく。ちょっと桜井が不憫になって来た。

今吉は知っていた。律儀で料理の得意な桜井は必ずバレンタインチョコを作ることを。だが自ら貰いに行くことはしない。
何故ならそれは…

「面白いやないか(笑)」
「絶対そっちの理由重視してんだろお前。…お、こっち来たぞ」

勇気を振り絞って桜井が来ると今吉はこっそり笑みを浮かべる。
二人の前に立つと肩にかけていた袋から一つ包みを取り出した。

「諏佐サン!これ良かったらどうぞ!口に合わなかったスイマセン!!」
「ありがとなー。桜井」

受け取ると桜井の髪を撫でてやれば、桜井は大人しく撫でられていた。

何時までたっても自分に渡してこない桜井に今吉は少し不機嫌になる。

今吉だって飄々としているが青春謳歌する男子高校生だ。
チョコレートは欲しい。
それが好きな子ならば尚更だ。

今吉の目線に気がついた桜井は途端真っ赤になり今吉はちょっと機嫌が治る。

「いいい今吉サン!えっとあのその…」

言葉を探してるらしいが手も一緒にばたついている。
コレはコレで可愛らしくいのだが、先程まで隠していた包みも丸見えで面白い。

意を決して袋の中から包みを取り出して今吉の前に差し出した。

「好きですっ!」
「…………え?」

一気に静寂に包まれる廊下。

今、桜井は何て言った…?

「「えええええっ!!!」」

辺りでは各々に、告った!?あの二人男同士なのに!ホモ、ホモなのか!?┌(^O^;┐)┐などと廊下は混乱しきっている。

「って何桜井まで一緒に驚いとるんや!」
「え、僕何言っちゃって…!ス、スス」
「ど、どうしたんや桜…」
「スイマセンでしたあああ!!」

脱兎の如く桜井は叫びながら逃げ出した。

廊下にいたメンツは口を開けたまま桜井の逃げ出した先を眺める。
その中で一番早く復帰したのは諏佐だった。

「今吉、今吉」
「あ、ああ何や」
「行かなくていいのか?」
「いいんやいいんや。ちゃんと貰うもん貰うたしな」

いつもの何を考えているかわからない笑みを浮かべて今吉は教室に入っていく。

「それに」

また面白いからや(笑)なんて言ったら諏佐はあまりにも桜井が不憫過ぎるので殴ろうと思った。

「どうせまたすぐ来るしなぁ」

片手には桜井の持っていたチョコの入ってる袋。

あーあ、と諏佐は呟く。

逃げ出した桜井が袋がないことに気づき、真っ赤になって引き返して来るまで10分もかからなかった。


title.stardust


―――
付き合ってはない二人。
悪ふざけしすぎた(笑)
ちょっとお題改変しました。
 

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