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□前途多難な恋は行方知れずのまま
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「おかしい」

高尾は呟いた。
隣にいた緑間が高尾を見ればどうやら休憩中の宮地を見ていたらしい。

そういえば今日、いや、最近、宮地はどことなくぎこちなかった。
努力で積み重ねた技にキレもなければいつもの罵声も聞こえない。つくづくおかしいのだ。

「そんなの宮地サンじゃねー!!どうしちゃったんだよ宮地サン!」
「確かにおかしいのだよ」
「だろー!?俺もそう思ったわけよ!」
「高尾」
「何真ちゃん」
「GOなのだよ」
「え!?俺行くの!?つーかあの宮地サンに突っ込んでけるのは勇者だけだと思う。ってかなんなのGOって!!俺黄瀬クンじゃないよ!?」

俺は犬じゃないッス!!by黄瀬

「…今、黄瀬の声が聞こえたような気がするのだよ」
「あー、わかる気がするけどそれ言っちゃダメね」

高尾は胸の前でバツを作るとお前も言っただろう、と緑間が反論する。
そんな緑間には目もくれず、高尾はその鋭い鷹の目で宮地を観察し続けた。
緑間も見れば流石に視線に気がついて宮地がこっちにやって来るから二人して慌てる。

機嫌が悪いワケじゃないがいつもと違う宮地に勇者でもない二人は戸惑って何も出来ないでいた。

「んだよお前ら」

目の前に宮地が立つと腹を括ったのか、持ち前のコミュ力で宮地に話を振る。
明らかにここは緑間は適任ではない。

「宮地サンどうしたんスか?調子悪かったりするんですか?」

いつもの笑顔を浮かべてさり気なく?聞いてみるが、高尾にはんなわけねーだろ轢くぞ、とでも返ってくるかと思ってた。

だが、宮地はばつの悪そうに顔を背けてしまう。
何かしら心当たりはあるらしい。

「…な奴が出来たんだよ」
「…え?」
「だから!好きな奴が出来たんだよ!」
「え、ええええええ!!マジッスかおめでとうございます!」
「めでたかねーよ!!」
「二人共声がでかいのだよ!!」
「真ちゃんもね!!ってあらあら、皆こっち見てら」

見渡せば体育館で休憩していた部員達は三人に注目していた。

高尾が何でもないッスよー!気にしないでくださーい!!なんてフォローをしている。

宮地はハッとした顔をして瞬時に振り返る。そこには監督と話をしていた大坪がいた。
フォローも言い訳もしてない緑間はしっかりとそれを見ていた。

「宮地先輩、主将のこと好きなんですか?」
「ぶっ!おま、ストレート過ぎだろ!」
「なになに真ちゃんわかっちゃったの!?」

フォローを終えた高尾が緑間を教えろと言わんばかりに揺らす。
が、宮地は無言で体育館の床を見つめていた。
高尾も宮地の様子におちゃらけた行動を止める。

「アイドルかバスケのことしか考えてなかった俺がいきなり男を好きになるとか。…気持ち悪いだろ、こんなの」
「宮地サ…」
「宮地先輩。貴方は好きになったことを否定するんですか。逃げるんですか」

キツめの口調で緑間が責めるが、宮地は緑間から目を背けたまま答える。その瞳は悲しそうだった。

「アイツ、鈍感だから気づくワケねーよ」
「でもまだ見込みがないって決まったワケじゃないし!」

高尾が言えば宮地は力なく笑い、高尾の頭を撫でた。
もう何も言うな、と言わんばかりに。

「休憩ももう終わりだ。
…高尾、緑間」

心配そうな高尾と不服そうな緑間の顔を見てふっと笑う。

恋をすると人は変わると言うけれどこの人は何も変わらない。優しいままだ。

「ありがとな」

多少はいつもの調子に戻ったのか宮地は踵を返し、周りの後輩に喝を出しながら走っていく。
その後ろ姿を二人して見ていた。

「後は本人達がどうにかするしかないのだよ」
「そだね」

二人の前途多難な恋に緑間は溜め息をつき、高尾は楽しそうに笑った。

実は大坪が三人を見ていたのも知らずに。


【前途多難な恋は行方知れずのまま】


end


―――
実は坪→←宮だったりする。
続き、書くかなぁ…。
 

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