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□雪解けを迎えた空色の兎
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あれは、二年前のこの時期の頃だっただろうか。
「なあ、公園寄って行こーぜ」
「えー寒いじゃん。やだ」
「風邪でもひいたら一溜まりもないのだよ」
「…僕、寄って行きたいです」
文句を言う彼らに対し、僕はポツリと呟いた。
それなのに皆は気がついて僕に目線が集まる。
180cmも超えている彼らから見下ろされるとやはり威圧感がある。…赤司君は別の意味で。
その赤司君は頷いて見せた。
「僕も賛成だな。寄って行こうか。皆僕の言うことはー?」
「ぜったーい!ひゃっふぅ!!」
「あ、待つッスよ青峰っち!!一番乗りは俺ッス!!」
走り出す青峰君を追い、黄瀬君も走り出す。
黄瀬君が前を走る青峰君の服の裾を掴むと、バランスを崩して二人して白い雪の中に飛び込んだ。
「犬は喜び庭駆け回り、なのだよ」
「飼い主にじゃれついている犬みたい」
緑間君は呆れながら、紫原君はあんまんを食べる手を休めず言う。
僕も公園に入り積もった雪に触れると冷たくて、柔らかい。
それを丸めて形を整えてから近くの小石と枯れ葉を刺した。
「テツヤは雪兎かい?」
赤司君が覗き込むように僕を見るが、彼の後ろにはこの短時間で作ったのか三段重ねの雪だるまが出来上がっていた。
「ホントは鎌倉を作りたかったんだけどね、流石に全員入るのは無理だからな」
「赤司っち、黒子っちー!そんな所にいないで雪合戦やるッスよー!!」
此方に向けて手を振る黄瀬君は青峰君とじゃれすぎてすでに雪だらけだ。
突然頭に衝撃が来る。触れば髪には雪が付いていた。
先にいるのはガキ大将のように意地悪く笑う青峰君で。
「油断し過ぎ何じゃねーのテツゥ」
「青峰君いきなりはないんじゃないですか?」
「仕方ないのだよ。やるからには容赦しないのだよ」
「勝ったらお菓子ちょーだいね」
「テツヤ、行こう」
「……はい」
そんな、白くて優しい記憶。
*