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□あい、にーど、ゆー
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紫原に手を引かれ、連れて行かれたの何故か学校だった。

「え、学校?」
「うん。もっと奥だよー」

休日の、それに午後の為か人気は少ない学校の中を二人で進んでいく。
内心氷室は180cm越えの男子高校生が学校で二人で手繋いでるのもなぁと思ったが、紫原が楽しそうにするので黙ってついて行った。

氷室は数ヶ月前に転校して来たばかりでそれからもバスケに熱中してきたのであまり広い学校の構造を知らない。

「ついたよー」

目の前には立派な教会が立っている。しかも校内に。
思わず氷室は感嘆の声を上げる。

「Oh…、すごいな。学校に教会があるなんて思ってなかったよ」
「ミッション系の高校だからねー。じゃ入ろっか」
「入って大丈夫なのか?」
「うん。基本的誰もいないからよくサボる人は使うらしーけど」

食べていたチョコレートをしまうとその大きな手で古めかしい音を立てながら木製のドアが開けられた。
綺麗に掃き清められた教会は荘厳な雰囲気で祈りを捧げるマリア像の上にはステンドグラスが僅かな光でキラキラと様々な色に輝いていた。

静謐な空気の中二人で赤い絨毯の上を歩く。

一人壇上に上がり正面に回ると氷室は黒く塗られた壇をゆっくり触った。

「此処に神父が立って誓いの言葉を夫婦となる二人に問うんだ」
「あの健やかなるときも そうでないときも〜ってやつー?」
「あっちは英語だからAlso when healthy Also when that is not rightだね」

そのまま氷室は壇上で英語で奏でるように神父の言う誓いの言葉を口にする。


“Also when healthy
Also when that is not right
This person is loved
It respects
It helps
It comforts
It helps
Limitation of a life
Fidelity is protected firmly
Does it swear to both live?”


低めの声は静かな教会に染み渡り、意味のわからない紫原の耳にも綺麗に入ってきた。

でも氷室が立っているそこは神父が立つ所であって紫原が立って欲しい所はそこじゃなかった。

「ねぇ室ちん。室ちんはこっちでしょ?」
「えっ、うわぁ!?」

紫原は反対側にいる氷室を軽々持ち上げると自分の隣に持って来る。
いきなり持ち上げられて慌てる氷室だが物を傷つけるから危ないと大人しくなった。

「俺にはね誓いの言葉もわからないけどさ」

手をギュッと握られてさっきまで握ってたはずなのに真面目な紫原の雰囲気につられて心臓が高まる。


バスケが大好きで、案外負けず嫌いで、完璧になりきれなくて、優しい彼を大事にしたいと思った。
食べるのが大好きで、マイペースでバスケが嫌いなのに誰よりも負けるのが嫌いな彼が愛しいと思った。


「あい、にーど、ゆーだよ?室ちん。だからずっと傍にいて?」

見れる左目は大きく見開かれて幸せそうに細められる。左目は前髪で見えないけれどきっと同じようになっているだろう。

「Yes.I need you,too.loveing you」

紫原が身体を引き寄せると二人の唇は自然と近づく。
誓いのキスはホワイトチョコレートの味がした。


【あい、にーど、ゆー】


アナタがいなくちゃ私は死んでしまうから永遠に傍にいると誓って下さい。


end


―――
英語はあてにしないで下さい(笑)
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