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□あい、にーど、ゆー
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見上げれば灰色の空からは白い雪が舞い落ちる。
それを掌に乗せれば手袋越しにも冷たく感じて冬だなぁと改めて氷室は実感させられた。

隣の紫原は規格外に大きな身体を屈ませ、マフラーに顔を埋めながら寒そうに震わせる。

「寒過ぎだし…」
「まだ積もり始める前だからましじゃないか?此処は雪が降るんだろう?」
「そうらしいねー。あ」
「どうした?」

紫原の目線の先には高くそびえ立つ教会があり、そこには人がたくさん集まっている。
扉からは雪にも負けない程白く幸せそうな笑顔を浮かべた花嫁と隣では同じように幸せそうな笑顔を浮かべた新郎が腕を組み祝福を受けていた。

「室ちん、こんな寒いのに結婚式やってるー」
「ホントだな。でも幸せそうだ」

微笑む氷室に白い雪がかかり、まるで花嫁のベールのように降り積もる。
紫原は気恥ずかしくなりもう一度教会に目を移した。

「教会か…。アメリカに居た頃はよく教会に行ったものだよ。何せあっちはキリスト教の人が多かったからね。あっちこっちに教会にがあった」

思い出すように教会を見続ける氷室に紫原は問うた。

「行ってみたい?」
「え?」
「俺、自由に入れる教会知ってるよ」
「でもいいのか?まっすぐ寮に帰りたいだろ寒いし」
「行ってみたい?」

断り続ける氷室にもう一度聞けば氷室は紫原を困ったように眉を下げ見上げた。
それに紫原は首を傾げる。まるでどうなの?と聞くように。

氷室はしばらく黙って唸るとポツリと答えを出した。

「…行ってみたい」
「んじゃれっつごー」

なかなかない氷室の我が儘に紫原は満足げに頷くと(言っても半分紫原が無理やり言わせたようなものだが)、紫原は氷室の手を取り楽しそうに歩き出した。



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