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□騒がしい君がいるだけで
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「わーっ!雪ッス雪!!」

いつもの帰り道、鉛色の空を見上げれば白い雪が重力に逆らわずヒラヒラ落ちてくる。

隣で制服の上にコートを着込み、マフラー、手袋もしてはしゃぐ黄瀬は空に手を翳して雪を掴もうと必死だ。
今も足元には雪が積もってんのによ。

黄瀬の場合桜が咲いても騒ぐ、暑くても寒くても騒ぐ、雨が降っていようが台風が来ようが騒ぐ。要は騒がしい。

「青峰っち雪ッス雪ッスよ!!」
「るっせーよ黄瀬。お前は風の子か」
「むぅ、青峰っちに言われたくないッスよ!そんな寒そうな恰好して見てるこっちが寒いッス!!」

そんな俺の恰好は制服にマフラーを巻いてるだけ。でも下にセーター着込んでるんだぜ?

「あー寒い寒い寒い!!青峰っち雪合戦しよ!!」
「寒いのにやるのかよ!」
「動かないと寒いッス!!」

寒い寒いと連呼しながら足元の雪を恐る恐る触る黄瀬を余所に近くの雪を素早く掴むとその黄色い頭に投げつけた。

「冷たっ!!何するんスか青峰っち!!」
「雪合戦するっ言ったのはお前だろ」
「酷い!まだ始める何て言ってないのに!!絶対勝ってやるんスからね!」
「上等だ!俺に勝てるのは俺だけだぜ黄瀬ェ!!」

そして俺達の間に戦いの火蓋が切って落とされた。





「あー…つっかれたぁ…」
「結局どっちが勝ったかわっかんねぇよ…」
「そうッスね」

そう言って黄瀬がカラカラ笑う。
俺達は白い雪の上に倒れ込むが背中は痛くならない。雪は柔らかいが冷たい。もう手も冷え切って痛たすぎんだけど。

「またやりたいッスね。今度は黒子っちや赤司っちや紫原っちや緑間っち、桃っちも誘って」

そしたらもっと楽しいッスね!雪の上をコートのことも気にせず転がる黄瀬の金髪は雪で濡れて、太陽の光がなくたって輝いている。

そうだな、と言うと嬉しそうに黄瀬は笑って俺に飛び付いて来た。急な重さで奇妙な声を上げた俺に黄瀬は笑う。

青峰っち帰ろ、と立ち上がると俺も引き上げてさっさと歩き出す。

寒いッスね、と黄瀬はまた呟いた。

手を引き寄せて繋いでやればふにゃっと笑って暖かいッスね、と手を握り替えされた。


【騒がしい君がいるだけで】


end
 

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