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□happy bitter sweet
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室ちんは俺と違って甘いものが余り好きじゃないらしい。
よく何か食べに行ってもブラックコーヒーだったり、ビター系だったり。

俺はお菓子を食べるのも好きだけど作るのもそれなりに得意。
でもつい甘いものになってしまう。
だけど室ちんは俺が作るケーキはいつも美味しそうに食べてくれた。

正直部活後でダルいし動きたくなかったけど、自然と俺の手は動く。
材料を混ぜ込み型に流し込んでオーブンに入れれば後はゆっくり待つだけ。

今日も喜んでくれるかな。





「室ちんー」
「アツシ?」

ようやく冷えたケーキを持って室ちんの部屋に押しかければ仕方ないなあ何て言って部屋に通してくれた。
床の上にはもう寒くなるからマットが敷かれていて肌触りがよくてゴロゴロしたいけど今は我慢。

前室ちんがくれた何度も使える箱だっけ?まあそれの中に入れて持って来たのを室ちんに渡す。

「室ちん食べて」

優しげに見える片目を細めると机に置いて慎重に室ちんは箱からケーキを取り出した。

大きさは俺の掌にすっぽり収まるサイズで(と言っても俺の場合だいたいのものが小さい時もあるし)、自分で言うのもあれだけど綺麗に出来たと思うんだ。

「今日はビターチョコなんだね」

甘いのも良かったんだけど今日はあえてビターチョコにしてみた。今日だけは室ちんの好みに合わせて。

同じ箱の中からフォークを取り出せば今日のアツシは気が利くな、なんて言われてしまう。

普段から気が利かないなんて思われてたなんて考えてなかったし。

受け取ったフォークでケーキを口に運べば室ちんの顔は綻んでた。

「ん、美味しい」
「でしょー?」

俺も嬉しくなって自慢気に言えば本当に美味しいよと繰り返す。

「でも珍しいなアツシが甘いものを作らないなんて」
「だって今日室ちんの誕生日でしょ?」
「…覚えててくれたんだ」

一瞬目を見開いてからポツリと呟いたそれにちょっと俺は不満げ。

何、俺が室ちんの誕生日祝わないとでも思ってたわけ?

「流石にこれにロウソクを刺すのはヤバいなあって思って」
「確かになあ」

ほんとはロウソク刺して来ても良かったんだけどサイズ的に17本は無理だなあって早々に諦めた。

「ハッピーバースデー室ちん」

そう言えば室ちんは本当に嬉しそうに子供っぽく笑った。

「Thank youアツシ!」

プレゼントついでにもう一つと唇に食らいつけばやっぱり苦くて甘いビターチョコの味がした。


【happy bitter sweet】


(室ちんあーん)
(はいはいあーん。…なあアツシこれ何かサクサクしてないか?)
(あー、隠し味に入れたまいう棒のこと?)
(really!?)
 

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