捧げ物、頂き物

□歩んだ証を共に
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珍しく連休が全て休みになった。
なんでも陽泉の監督は都合が合わず、部長の心身状態もよくなかったらしい。

その連休を利用して紫原は実家の東京に氷室を連れて帰ってきた。

そこに帝光中元主将であり、洛山主将の赤司は珍しく帰ってきた紫原に会うために降旗を連れて紫原宅へ上がり込んだ。

そして、今に至る。

「みんな〜見て見て〜」

一回自室に引っ込んだ紫原が手にしていたのは淡い紫色のアルバムだった。
紫原の声に氷室と降旗は首を傾げて、赤司は嬉しそうに顔を綻ばせている。

開かれたアルバムを氷室と降旗が覗くとまだ幼い顔立ちの少年達が写っていた。

「これ中学校の頃の写真?」
「赤ちん案外写真持ってたんだよ〜」
「半分くらいは桃井に撮ってもらったんだけどね」

捲れば捲れる程溢れ出す輝かしい奇跡のような日々。
様々な笑顔が、形となって残されていた。

思わず氷室は目を細め、降旗の頬の弛む。

「二年生の夏合宿のやつか」
「あー、あのいきなり赤ちんが『山に行こう』とか言い出したやつ?」
「それだね。この時は桃井が用事で来れなかったからボクがだいたい撮ったっけ」
「でもそのわりには赤ちん結構映ってるし。
…ん、何この黄瀬ちんうざっ」

赤司と紫原で中学校の頃を話し出してしまうと氷室と降旗は完全に蚊帳の外。

氷室は笑顔を浮かべてはいるが明らかに周りの温度が違う。楽しそうにしている二人は気がつかないが。

「何かノリノリでエプロンで回ってんだけど」
「確か大輝と悪乗りしたんだな」
「こっちは真太郎と」

降旗も降旗で氷室に気づかず、昔の赤司を知れることはなかなかない為貴重だけど本当は二人でいたかったのだ。
あ、でも―…。

「降旗君」
「あ、うぇ?はい」

いきなり名前を呼ばれて思わず降旗は変な声を出してしまった。

ちょっぴり赤くなってしまうと呼んだ本人、氷室はクスクスと笑い降旗を手招きする。
降旗は首を傾げながらも氷室に近づいた。

「嫉妬してる?」
「え、な何のことですか…!?」
「あー、うん。そうだね」

氷室は頬を掻くが降旗を見れば一目瞭然だ。
顔に出やすいからありありと嫉妬してます、とわかりやすいのだが。

それに、自分と同じような感情を持ってるなら尚更だ。

「二人を嫉妬させてやろう?」
「え…?」

目を見開いた降旗を氷室は引き寄せ抱き締める。

慌てて声を漏らしそうになる降旗に指をたてて制し、ニコッと女じゃなくても見惚れそうな顔で言った。

「降旗君はあったかいね」

目で諭されてぐるぐると回らない頭を何とか回して降旗は言った。

「え、っと氷室さんもあったかいですよ?」
「このままキスしちゃおっかな」
「ええっ!?あ、ちょっと、」

演技の筈なのにどんどんエスカレートしていく。
がっちり掴まれてしまって逃げれない降旗はギュッと目を瞑った。

「光樹から離れろ」

肩を掴み紫原が二人を引き剥がし、赤司は降旗を抱き締める。

明らかに氷室を睨んでいる赤司をよそに氷室は紫原に立ち上がらされていた。

「ちょっとお菓子持ってくる〜。室ちん行くよ」

紫原に手を引かれ氷室は部屋から出た。



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