捧げ物、頂き物

□春先の敵は手強い
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「黒子!だから掻くなってんだろ!!」
「う〜っ…。駄目ですか?」
「駄目ったら駄目だ!!」

叫ぶように言うと黒子は俺と掴まれた手を見てフッと笑う。

「…シュールですね」
「お前がそうさせてんだろ。
ってかお前目薬とかねーの?」
「目の疲れをとるのならありますよ。射したことないですけど」
「ないのかよ!」

あぁ今なら主将の苦労もわかる気がする。

主将。俺にはツッコミはムリっす。先輩達がいなかったら降旗辺りに頑張ってもらうしかない。頑張れ降旗。

宛もないこと考えいると黒子は俺の手を外して目薬を取り出した。

「母が買ってきてくれたんですが、うまく射せないんです」
「俺が射すから上向いてろ」

頷くと黒子は顔を上に向けたまま目をぎゅーっと閉じてしまっていた。

「……黒子」
「何ですか?」
「これじゃ射せねーんだけど」
「そうですね」
「…もしかして目薬怖ぇの?」
「そんなんじゃないです」
「だったら目ぇ開けろって」
「……ヤです」
「…目ぇ開けねぇとキスするぞ」
「いっそしてください」
「ばっ…!」

潔過ぎるくらいの黒子の言葉に俺は驚いておののいてしまったが、更に黒子は距離を詰めてくる。

手元の目薬を見る。
頑固な黒子のことだ、もう射さないだろう。

苦し紛れに黒子の目蓋にキスを落とす。
恥ずかしいそうに目を逸らした黒子に顔が思わず熱くなった。

「とにかく!掻くなよ!俺飯の用意するから」

はい…、と力なさげに黒子は返事をしていたが大丈夫か?

キッチンに入ってエプロンを着てから調理をし始めるが後ろからドンっと軽い重しがかかった。

「火神君」

黒子はぐりぐりと俺の背中に頭を押し付けてきた。
まるで甘えるような動きをしていた黒子だったがその動きはなかなか止まらない。

「黒子お前人の背中で目ぇ掻くんじゃねーよ!」
「だってかゆいんですもん」

ですもん、じゃねーよ!可愛いけど!!

何、これもう押し倒してOKな感じなのか?
あーでも明日部活あるしなー。
カントク、怒るだろうし。



【春先の敵は手強い】



「…火神君。今日の練習内容三倍ね」

次の日カントクは黒子を見て俺に言った。


end
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