捧げ物、頂き物

□春先の敵は手強い
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「火神君っ」

俺の服にしがみつき黒子は赤い潤んだ目で俺を見上げる。

俺はどうすればいいかわからなくてため息を吐いた。

それでも黒子は俺に詰め寄って催促する。

「火神君…っ。もう我慢出来ない…っ!」

そう、あれは数時間前に遡る。






いつものように部活が終わり、更衣室で服を脱いでいた時だった。

「へくちっ」
「あれ、今誰くしゃみした?」
「えらく可愛かったなー」
「……僕です」

口々に言う先輩をよそに手をゆっくりあげたのは黒子だった。
少しだけ鼻を啜り、よくよく見れば多少目が赤いような気がしないでもない。

「黒子花粉症?」
「いえ、去年は全く平気でした」
「今年花粉多いらしーぜ?」

俺は全くと言っていいほど花粉の影響はないが、黒子はそれでもなかったらしい。
黒子に言わせたら火神君より繊細何ですよ、と返されるに違いない。

黒子は目を何度も訝しげに瞬いて手を伸ばした。

「かゆいです」
「あああ黒子掻いちゃダメだって!」

まわりの部員が目を掻き始めてしまう黒子を慌てながら止める。
水戸部先輩に至ってた周りでオロオロしていた。

「冒頭のくしゃみ関係なしに黒子が目にくるタイプだったとは…」
「そうだぞ余計かゆく…ベクシュン」
「木吉…、お前は鼻に来てんの?」
「んー…、ベクシュン!!」
「うわ!こっちにやんなダァホ!!」

冷静に分析する主将に木吉先輩は目の前で大きなくしゃみをしている。
その後も連発し続けるがはっきり言ってあまり可愛くない。流石に黒子のくしゃみを聞いた後だとなおさら。

「兎に角黒子君掻きすぎると酷くなるからダメよ!!我慢して!!」
「カントク!?俺らまだ着替え中!!」
「見ても減らないでしょ!!」

バンっと勢いよくドアを開けたのはカントクだ。
まだ着替え中だった部員は恥ずかしがるが、黒子はちゃっかり着替え済みだった。

伊月先輩がそういえば、と黒子と俺を見る。

「なぁ黒子ー。今日火神んち泊まるんだっけ?」
「あ、はいそうです…」
「だったら火神に掻きすぎないよう見張って貰えばいいんじゃね?」

「「「あ」」」

で、今に至る。



無事に家に着きはしたが、何度も何度も黒子は目に手を伸ばそうとしては止めるの繰り返しをしていた。

挙げ句の果てには

「もうムリ…っ!」

とか言い出してきやがった。

上目遣い+目が潤んでる+縋って来てるだぞ。
好いてる奴にそんなことされて男としてはツラい。

あとさっきから台詞が最中のように聞こえるのは俺の気のせいか?

軽くトリップしてる間に黒子はまた目に手を伸ばす。
ハッとして黒子の両手を掴んだ。
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