捧げ物、頂き物

□大人になりきれなかった子供
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そういえば今日室ちんは機嫌が悪かった。
よくわかんないけど低血圧だったのか寝不足だったのかはわからない。
とにかく雰囲気がいつもより荒々しかった。

そんな日は俺に構ってくれない。
わかってたのに何故か気に入らなくていつの間にか喧嘩になっていた。

「そういう言い訳が子供っぽいんだろアツシは!!」
「俺子供じゃねーし!!よっぽど室ちんの方が子供っぽいし!!」
「だったら静かにしてくれ!!」
「今、室ちんの方がうっさいし!!」
「いい加減にしろ!!!」

頭に衝撃が走って頭をさすりながら振り返れば雅子ちんが竹刀片手に仁王立ちしていた。

「先生…」
「雅子ちん…」
「お前らの喧嘩に付き合ってる時間はない!練習を始めるぞ!!」

雅子ちんの一喝で部活は回り出す。
渋々俺も準備に取りかかるけど隣には室ちんはいない。

決着は曖昧なままになってしまった。





いつものように室ちんは隣にいる。それなのに距離が遠い。

普段は俺が抱きついたり、室ちんから構ってきたりするんだけどそれが全くない。

室ちんはあのことで俺を怒らないし、笑顔も向ける。
でもその顔は俺のだいっきらいな顔だ。
外界から自分を守るためにつくった仮面のような笑顔。

「どうしたんだいアツシ?」

あぁ、気にくわない。

そう思うところ辺りが子供なんだ、と誰かが嘲笑っていた。



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