捧げ物、頂き物

□クラスメイトSの実況
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暇だなぁ。

俺は自分の席から遠い窓の空を眺めながら思う。
少し騒がしいくらいの何の変哲もない英語の授業。

あ、俺?俺はクラスメイトSとでもしとけ。
ちなみに隣の可愛い女の子は今日はお休み。残念だ。
そのせいか見晴らしがいい。
隣の隣の席の席までよく見えた。

やっぱり暇なのか隣の隣の席の主である高尾は前の緑間の背中をじーっと見つめている。
そして何を思ったのか緑間の背中に手を伸ばした。

人差し指を緑間の背中に這わせるとビクッと緑間は反応し、高尾を睨みつけた。

高尾は気にせずイタズラげに笑い、前向けと言わんばかりに手を動かす。
真面目な緑間はすぐに向き直った。

高尾はまた緑間の背中に人差し指を這わせるが、からかわれるのがわかっているのか緑間は反応しない。
くすぐったいのはくすぐったいようで耐えてはいるが。

すると高尾は何やら文字を書き始めた。


えっと…『すき』?


「ーーっ!!」

緑間は途端に真っ赤になり振り返るが高尾は寝たフリを始めた。

クラスの雰囲気も騒がしいし、この先生の授業はこんなんだから怒ることもない。
ただ、わかんなーいと騒ぐ女子達の声が遠くに聞こえる程俺は二人を見つめていた。

何か見ちゃいけないものを見た気分だ。仲はいいとは思っていたけど彼処までとは…。
気恥ずかしさを感じながらもこっそり二人を見守ろう。

あぁ、それと俺は断じて腐男子じゃない。
ただリア充爆発しろ!と言うタイプじゃないだけだ。
そしてホモも否定するタイプじゃない。むしろ百合風は好きだ。
おっといけない。俺の個人情報はともかく続けるぞ。

「…高尾」

いきなりガバッと慌てて寝たフリをしたせいか、鈍い緑間でも高尾が起きてるのはわかっているらしい。

先生はこっちを見ない。
緑間は一つ溜め息をつくと高尾の髪に触った。

黒い髪は暖かい風に揺れてサラサラと舞う。一房その髪を捕らえると顔を近づけてキスを落とした。
その顔は見たこともないくらい柔らかくて、慈しむように微笑んでいて。

うわあああ、恥ずかしい!見てるこっちが恥ずかしい!!

それは高尾も同じだったのか高尾はガバッと顔を上げた。
その顔は言わずもがな真っ赤だった。
緑間はしてやったり顔。

高尾が言い返そうとした時教室に間延びしたチャイムが響いた。


あーあ、やっと終わった。

このままだと俺がリア充にやられる。
二人が醸し出すお花畑に巻き込まれる。それはイカン。
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