捧げ物、頂き物

□魅せられる赤
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俺が連れて行って貰ったのは稲荷大社。
本当は来る予定はなかったけど、どうしても来て見たかったのだ。
本殿の後ろに行き、斎場を過ぎてしばらく歩けば朱で塗られた幾つもの鳥居が建ち並んでいて俺を圧倒した。

「すげー…」

夕日の赤と落ちてくる紅葉、鳥居の朱、それに赤司の鮮やかな赤。
その色に侵されたようで頭がクラクラする程綺麗だった。

「上ばかり向いて歩いてる子はお稲荷さんに連れて行かれちゃうかもしれないね」
「何それ怖っ!」

俺が身体を震わせると赤司は隣でクスクス笑う。
緊張で固くなっていた身体は、いつの間にかすっかりほぐれていて、赤司と俺は笑っていた。

俺が見たことのない等身大の赤司のような気がして、きっと黒子はこんな赤司も見て来たんだと思って少しだけ胸がチクッとした。
その理由はわからなかったけど。

「もうそろそろ行こうか」





18時だというのに日暮れが早いのかすっかり沈んでしまっていた。

前を歩いていた赤司が振り返ると携帯を取り出す。

「メルアドくれないかな?」
「う、うんっ!」

緊張しながら赤外線で送ればくすりと赤司は綺麗に笑う。
美形は得だなぁ。何をやっても様になるし。

「じゃあまたね」

気がついたら目の前には泊まっていた宿が。

今日1日俺を振り回してくれた赤司は背を向けて颯爽と歩いて行く。


赤司に振り回され、赤に魅力された三日目の記憶は俺の修学旅行で最も強烈で鮮やかに彩られた。


【魅せられる赤】


家に着いてから勇気を出して黒子の助言の元、ありがとうとメールを送る。

しばらくして着信音と共にメールが届いた。
開けば、案外普通の答えが返ってきて驚いた。かなり失礼だけど。それと一緒にスカイプを繋げ、と伝えて来て俺はパソコンを起動させて、スカイプを繋ぐ。

「もしもし…?」
『電話じゃないのにもしもしはないだろう』
「あ、う…、ごめんなさい!」
『敬語は止めろ』
「は…、うん!」
『ギリギリだったね。折角会えたのに惜しいと思ってね』
「そ、そうなの…?」
『降旗君…、いや光樹って呼んでもいいかい?』
「いいよ。えとじゃあ俺は赤司でもいい?」
『本当は名前がいいけどね』

拗ねたような声を出す赤司に、ちょっとした関わりが出来ただけで頬が緩んでいたことに後から気づいた。

「そう言えば赤司どうしてあの時彼処にいたの?」
『待ち伏せてたから』
「え、ごめん聞こえなかった。もう一回」
『待ち伏せてたからだよ』


end
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