捧げ物、頂き物

□必死なのに、まったく
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黄瀬は目の前で黒子が持ってきてくれた服を小さい手で頑張って着替えている。

青峰は去り際に黒子が言っていたことを思い出していた。

『いいですか青峰君。黄瀬君いきなり身体が小さくなって不安になっている筈です。あまり不安がらせないようにしてあげて下さいね』

思考に沈んでいた間に着替え終わったようで黄瀬はベッドの上でくるっと回る。

「どうっすか?にあうっすか!?」

貸してもらったリスの服はどうにも黄瀬が着ると犬の耳にしか見えないが、可愛い。
気に入ったのかフードを被ってみせる黄瀬に青峰は持ち上げて、膝の上に乗せた。

「うわー、可愛い過ぎて誰にも見せたくねぇ」
「ふだんでもいわないようなこというんすね」

膝の上で膨れる黄瀬の柔らかい頬を押せばプニプニしていて、プーっと息の抜けていく様子が可愛らしい。

「ってか幼稚園児サイズにするとお前ちっさいんだな」
「あんまりでかいようちえんじがいたらこわいっす」

確かに大きすぎる幼稚園児がいたらそれはそれで怖い。それは兎も角、黄瀬は標準サイズ位だろう。高1の黄瀬と比べると大違いだ。

「伸びすぎだろ、お前」
「それはあおみねっちもっすよ」

青峰もそれは幼稚園児の頃に比べれば格段に伸びた。日本人の平均身長を余裕で越し、190cmを超えた今でも止まることを忘れたかのように成長し続けている。しみじみでかくなったもんだなぁと黄瀬の成長を実感した。

「あおみねっちー、あおみねっちー」
「んだよ」

小さな手を青峰に向かって一生懸命伸ばす。大きな金色の頭がコテンと揺れた。

「だっこ、してほしいっす」

必死に伸ばす腕とは対称的に黄瀬の大きな金色の瞳は不安げに揺れていた。
それをすぐに察した青峰は軽々と抱き上げ、自分の胸の中に招き入れる。
いつもより暖かい体温も軽すぎる身体も確かに黄瀬のものだ。

筋肉のついた逞しい胸板にすり寄る黄瀬を無理やり引き剥がせばいとも簡単に剥がれる。
黄瀬の黄色の瞳は水面のようにユラユラ揺らいでいた。

「ねぇあおみねっち、おれもどれるのかなぁ?」

縋るように青峰の服を握る黄瀬は明るく振る舞ってはいたけれど不安だったのかもしれない。
何時もとは何もかも違うこの状況に。

「もし、もしっすよ?おれ、このままもどらなかったら…」
「そん時は俺が1から育て直してやるよ」

黄色の髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜながら青峰が言うと、黄瀬はホッとしたように溜め息を吐いてから、気の抜けたような顔で朗らかに笑った。

「あおみねっちのくせにイケメンだー…」
「おう、イケメンだぜ?」
「そうやって言うところもあおみねっちっすねー」

ムッと青峰が黄瀬を見るとクスクス笑うからどうでもよくなって幸せそうな溜め息を一つ。

「安心して俺といりゃあいいんだよ」

黄瀬の長めの前髪を掻き揚げ、おでこにキスを落とすとそこを小さな手で抑えていた。

「あ、あおみねっ…、うわっ!?」

わなわな震えて真っ赤になる黄瀬をよくわからない煙が覆う。
青峰が驚いて咳き込んでいる間に煙は黄瀬の周りから晴れて黄瀬の姿が露わになった。

そのシルエットは小さなものではなくしなやかで大きいなものだった。

「戻った…!」
「黄瀬お前…」

煙の中心で手を見つめる黄瀬を見て青峰は絶句する。
その目線の先には太陽の下に晒される白く張りのある肌があった。
黄瀬は女みたいな悲鳴を上げてシーツにくるまる。

「きゃあああああ!!!」

恥ずかしながら真っ赤になっているだろう黄瀬をシーツの上からポンポンと叩けば落ち着いたのか顔を出した。

「小さい黄瀬も良かったなー」
「えっ!?」
「なーんてな」
「もー青峰っちたら酷いッスよ!」

小さい時と変わらず頬を膨らます黄瀬に青峰は笑みを零す。
笑う青峰に黄瀬はシーツにくるまったま笑顔で飛び付き言った。

「でも大好きッス!!」


【必死なのに、まったく】


アンタは俺をからかってばかりなんだからっ!!


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