捧げ物、頂き物

□僕らは一緒に大人になる
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場所は移って近くのバスケットコート。見上げた青い空が眩しい。やっぱり此処は変わらないんだなぁと黒子は座り込んだまま空を見上げる。

「まだまだだな、やっぱり」
「そう、ですね」
「全く叶わねぇ…!」
「未来の僕らとは言え…、悔しいです」

未来の火神は余裕そうに笑い、高校生の火神は肩で息をする程度だったが黒子は今とも変わらず二人して息を切らしていた。

「まあ五年の差はでけぇってことだな」
「我ながらすげームカつく!!」
「わんっ!」

連れて来たすっかり大きくなったテツヤ二号が走って未来の火神にすり寄る。するとしゃがみ込んで頭を撫でれば嬉しそうに鳴いた。今だにビビってる方の火神とは大違いだ。

タオルを取りに行っていた未来の黒子は火神に近寄ると二号を呼ぶ。

「二号おいで」
「わふっ」

飛び込んで来た二号を抱くと片手で火神の頭にタオルをかけようと奮闘する。
自分の未来だとは言え恥ずかしく思いながら高校生の火神に近寄るといつの間にか未来の黒子から渡されていたのか黒子の頭をタオルごと包み込んで撫で回す。
そんな黒子の指に高校生の黒子は光る何かを見つけた。火神も気がついたようで首を傾げている。

「その指輪って…」

その言葉に一気に真っ白な光に包まれて、また謎の浮遊感に襲われた。



「昔の僕」
「昔の俺」
「これから君は何度でも何度も何度も傷ついて泣くだろう。でもその一つ一つ噛み締めて時が経つ程手放し難くなるから」
「だから安心して戻れ」
「僕は」
「俺は」


「「ちゃんと幸せだ」」


真っ白な光の中見えなかったけど未来の二人は笑っていたような気がした。



「わん!」


二号が吠える。
二人はその声で意識が戻った。

「あれ…」

二人人は未来に飛ばされる前の状態のまま向かい合ったいた。

「お前ら何つっ立ってるんだ?」
「日向先輩…」
「お、二号此処にいたんだな。おいで」
「伊月先輩…」

首を傾げる日向と呼ばれた伊月の方へ二号は走り寄る。二人はそれで未来から帰って来たんだと実感した。

「さっさと着替えろよー」

そう言って足早に更衣室に向かう日向達だが時計を見ても一分もたっていなかった。それに黒子と火神は顔を見合わせた。

「そう言えばあの箱は何処に行ったんでしょうね」
「さあな」
「…でも嬉しかったです。僕は、未来でも君の隣に居ることが出来るんですね」

儚げに笑った黒子に火神は何処かに行ってしまわないように手を握る。そして恥ずかしがりながらも真剣な目で黒子を見つめた。

「黒子」
「はい?」
「まぁ、なんだ、末長くよろしく」

照れくさそうに笑った火神は未来の火神と変わらない。黒子だけの火神だ。

「…はいっ」

自然と距離は近付いて唇を合わせてるだけのキスをした。それはまるで誓いのキスのようだった。


【僕らは一緒に大人になる】


これからの未来も君と共に。


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