捧げ物、頂き物

□僕らは一緒に大人になる
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「ちわース!!」
「こんにちわ」

重いはずの体育館のドアを軽快に火神が開ければ、声は反響して帰ってくる。体育館はまだ静かで誰もいないようだ。
ドアから吹き付ける風が寒いのか黒子が体温の高い火神にすり寄る。

「火神君は暖かいですねぇ」

逞しい腕に細い腕を絡め、火神を見上げが、火神からすれば上目遣いして誘ってるようにしか思えないのだが。
火神は開いている手で黒子を引き寄せると、黒子の身長に合わせて屈み込む。

「黒子…」
「火神君…」

二人の顔は自然と近づいていって…。

「わんっ!」
「うおっ!?」

一気に離れて振り向けば、尻尾を降って何かを加えているテツヤ二号だった。二号が加えていたのは手のひらサイズの小さな箱。平然とした態度で黒子がしゃがみ込み二号と目線を合わせる。

「二号、これどうしたんですか?」
「わふぅ?」

可愛らしく首を傾げた二号から箱を受け取った黒子は開けようと手をかける。

「お前それ開けんのかよ」
「開けないと持ち主わかりませんし仕方ありませんよ」

蓋を開ければ中身は何もなかった。首を捻る二人を余所に箱は突然光り出す。

「え?」
「うわっ!」

目の前が光に包まれた途端、二人に浮遊感を感じた。



「うおっ!?」
「うわっ!」
「いってぇ!」

凄い音を立てて何かにぶつかれば先に落ちた火神の上に黒子が落ちる。火神の上に乗ったまま見渡せば何処かの家のベッドだった。

「此処は…何処でしょう」
「おま、どけ!俺達…体育館にいたよな」

火神が黒子を持ち上げて隣に下ろせばガチャリと音がしてゆっくりとドアが開かれる。
水色の髪は今よりも伸びていたが透き通った水色の瞳は変わらない。それはどう見ても…、成長した黒子だった。

「大我君に…、僕?」
「夢…じゃないですよね」
「え、お、俺!?」

はて?と同じように首を傾げた黒子と成長した黒子。
その黒子の後ろから現れた男は背丈こそ変わらないが顔つきが精錬された火神だった。

火神は成長した火神に指をさしたまま震えた声で叫んだ。

「Who are you!? Is it a Doppelganger!? And where is this!!?」
「I am me!! Please settle down!」
「大我君混乱して英語になってますよ」
「Taiga!!?」
「火神君うるさいです」
「大我君もですよ」
「「いてぇ!」」

今度は混乱し始めた二人の火神に二人の黒子が火神の頭をチョップして、火神は頭を抑える。

「兎に角状況を理解しましょうか」





先程の寝室から居間に移って机の上には四つのティーカップが並ぶ。彼らは向かい合うように座る。

「なる程…つまり、君達は五年前の僕らってことですね」
「そうなりますね。ということは貴方達は21歳の僕…と言うことですね」

ティーカップに口をつければ黒子の好みが最初からわかっていたかのようにミルクティーで甘い。未来の火神は感慨深けに二人を見ていた。

「昔の俺達ってこんなに初々しかったんだなぁ」
「確かにそうですねぇ」
「なぁ今の俺達って…、付き合ってんのか?」

未来の彼らはキョトンと顔を見合わせてクスリと笑う。
未来の火神はニヤニヤしながら高校生の二人を見て行った。

「教えて欲しいか?」
「おう!」
「うぅ…、はい」

元気よく返した火神に対し、顔を少し赤らめて黒子が頷いたのは未来の火神の笑顔にやられたからだからだが。

「じゃあ何処から行くかなぁ」
「待って下さい大我君」

未来の黒子に呼び止められて火神が二人して止まった。それを見て微笑んで訂正する。

「ああ、こっちの大我君ですよ」
「え、ああ」
「何でだよテツヤ」
「ふぇ!?」

黒子が驚いて顔を上げればまた未来の黒子が訂正してから、止めた理由を言った。

「よく言うじゃないですか。未来のことは知るべきじゃないって」
「今知っても面白くねーもんな」
「でもヒントだけはあげましょうか。ヒントはベッド、です」

二人してさっき着地?した寝室を思い浮かべる。
確かあの部屋には今の火神が使っているサイズよりも大きいクイーンサイズが一つだけ置かれていた。

「もしかして此処未来俺か黒子の家なのか?」
「火神君…君はホントに馬鹿なんですか。ベッドが一つしかないのって…、あ」

未来の黒子が唇に人差し指を当ててるのを見て黒子は言うのを止めた。

「秘密です。自分で考えて下さい」
「あぁ!?何だよそれは!!」

うがぁーと叫び出した火神に黒子はクスリと笑う。未来の二人も微笑ましく見守っていた。

「じゃあ結局お前らが未来の俺らだってわかんねーだろ」
「そうですね…、その証拠だったら大我君」
「ん?」
「バスケをしましょう」



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